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修道大に「ハベルのベンチ」 「自由な議論」 思想を継承 チェコ大使館が設置提案

 民主化後のチェコを率いた初代大統領、故バツラフ・ハベル氏にちなんだ「ハベルのベンチ」が、広島市安佐南区の広島修道大に設置された。「自由で開かれた議論」を重んじたハベル氏の思想を継承しようと、チェコの財団が進めるプロジェクトの一環。7日、同大でお披露目式があった。

 「ベンチ」は、木材と金属で作った机と椅子2脚のセット。同大図書館前の広場に据えられた。机はドーナツ型で、中央を貫くように桜の木を配してある。金属部分には、ハベル氏が残した「真実と愛は偽りや憎しみに勝るべし」との言葉がチェコ語で刻んである。

 ハベル氏は1989年、当時のチェコスロバキア共産政権を非暴力で倒した「ビロード革命」を主導。95年には広島市を訪れた。修道大の協定校がチェコにある縁もあって、同国の在日大使館が設置を提案した。米ジョージタウン大、英オックスフォード大など各国の大学や公園に置かれ、修道大は43カ所目。アジアでは第1号となるという。

 この日の式典は学内外の約40人が臨んだ。チェコのマルチン・トムチョ駐日大使も参列し「ベンチに込められたメッセージが、表現や報道、思想の自由が抑圧されている東アジアの地域にも届いてほしい」とあいさつ。三上貴教学長も「名誉なこと。自由な議論の重要性を学生に強く伝える」と述べた。(田中美千子)

バツラフ・ハベル氏
 1936年、チェコスロバキア(当時)・プラハ生まれ。チェコ工科大や芸術大で学び、劇作家に。68年の民主化運動「プラハの春」の挫折後、反体制運動指導者として活躍。89年、無血で共産党から政権を奪取して「ビロード革命」を成功に導き、同12月にチェコスロバキア大統領に選出された。同国解体後の93年にチェコの初代大統領に就任、98年に再選された。2011年に75歳で死去。

(2021年12月8日朝刊掲載)

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