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被爆者認定「疾病考慮」 「黒い雨」協議 国提示に広島側反発

 広島原爆の直後に降った「黒い雨」の被害者救済に向け、厚生労働省は8日、2022年4月から運用する被爆者認定指針づくりで「考慮すべき内容」を明らかにした。黒い雨に遭った確認や、がんなど国が定める11疾病の発症の有無を重視する。広島県、市は「今回の内容が指針に反映されれば、首相談話がうたった幅広い救済につながらない」と反発している。

 同日オンラインであった県、市との2回目の協議で示した。①黒い雨を直接浴び、服が汚れたことなど黒い雨に遭ったことを確認する必要がある②時間帯や場所が原告と同じ事情にあったかや当時の居住実態を確認する③一定の病気を患っていることを考慮に入れる―が柱。

 前提として、原告全84人を被爆者と認めた7月の広島高裁判決で原告は黒い雨を浴び、その場所で居住実態が継続し、特定の病気を患っていることが確認されていると指摘。一方で「訴訟への参加・不参加にかかわらず認定し救済できるよう早急に対応を検討する」とした菅義偉首相談話や被害者の高齢化を踏まえ、「証明の負担を減らす方法を検討するべきだ」との文言も盛り込んでいる。

 厚労省は今回の提示を基に次回協議で指針案を示す。原子爆弾被爆者援護対策室は「幅広い救済が原則だが、これまでの被爆者認定との整合性を取る必要もあり、難しい作業になる」としている。

 これに対し、県、市は協議で雨が降った地域にいた人を被爆者に認定するよう要求。広島高裁判決は疾病の有無を要件としておらず、「病気の発症を要件にするべきではない」との考えも伝えた。

 県、市によると7月以降、黒い雨被害を訴える広島県民から県・市への被爆者健康手帳の申請が急増し、既に計1200件を超えた。広島県は「国は高裁判決と首相談話を重く受け止め、幅広い救済にかじを切ってほしい」としている。(樋口浩二)

(2021年12月9日朝刊掲載)

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