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広島市と県 「病気と手帳交付は別」 「黒い雨」認定要件巡り溝

 「黒い雨」訴訟の原告以外の救済を巡り、厚生労働省と広島県、広島市などが8日に開いた協議で、厚労省は「一定の疾患に罹患(りかん)していること」を認定要件に盛り込みたい考えを示し、県と市は反対した。今後の協議でも疾患を要件とするかが焦点になるとみられるが、両者の考え方の違いが鮮明になった。

 「黒い雨」に遭った人の被爆者認定は、国が定める援護対象区域にいたことに加え、がんなど11疾病の発症が要件となってきた。これに対し、7月の広島高裁判決は雨域や疾病を要件とせず、原告全員を個別に被爆者と認め、確定した。

 非公開であったこの日の協議で広島市は、判決に沿った救済策として①申請者がいた場所に黒い雨が降った②雨が降った時にその場所にいた―の2点が確認できれば被爆者健康手帳を交付するべきだと主張したという。協議後、取材に答えた原爆被害対策部の河野一二部長は「広く救済するのが当初からの目的。病気はあくまで(手帳交付後の)健康管理手当の要件で、手帳そのものの交付とは切り離すべきだ」と話した。

 県被爆者支援課の二井秀樹課長も「国が示したものをこのままオーケーとはいかない」と強調。「高裁判決も疾病の発症を要件にすべきでないと判断している」とし、認定要件としないよう求めた。

 認定に際しては、現行の援護対象区域より広い「大滝雨域」や「増田雨域」にいた人を認定対象とするほか、両雨域外でも雨に遭ったと認められる合理的な理由があれば対象とするよう主張した。(明知隼二、松本輝)

(2021年12月9日朝刊掲載)

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