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被爆者・放射線治療患者が発症 血液がん主因遺伝子発見

 被爆者や放射線治療後の患者にみられる白血病、骨髄異形成症候群(MDS)の主要な原因遺伝子の一つを、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)所長の稲葉俊哉教授、同研究所の本田浩章教授たちのグループが発見した。10日、米学術誌「Cancer Cell」のオンライン版で発表する。

 白血病や、白血病と並ぶ代表的な血液がんMDSになった被爆者たちのうち半数近くが、血液細胞中にある2本一組の「7番染色体」のうち1本が欠けている。稲葉教授たちは、7番染色体の中でも、遺伝子「Samd9L」を失うことが、発病に関与していると結論付けた。

 研究グループは、遺伝子操作でSamd9Lを欠損させたマウスを飼育。25カ月までに約半数が白血病やMDSになり、発症率は正常マウスの約8倍に上った。ヒトに換算すると中高年での発症が目立ち、被爆から半世紀以上たってMDSになる人がいることとも符合した。

 Samd9Lには、細胞の増殖頻度を制御する機能がある、と同グループは分析。骨髄中の造血幹細胞に放射線の影響で異常が出た上に、Samd9Lが失われると異常な血液細胞の増殖が加速し、発病するとみている。

 原医研は2003年にも、21番染色体の遺伝子「RUNX1」の異常が、原爆などで放射線を浴びたMDS患者に多くみられることを発見している。

 稲葉教授は「被爆や放射線治療後に発症するタイプの白血病、MDSで、主要な二つの原因遺伝子が出そろった。早期発見の手法を開発するスタート地点に立ったといえる」と話している。(馬場洋太)

特定は画期的
 被爆者の白血病・MDS治療に詳しい長崎原爆病院(長崎市)の朝長万左男院長の話

 7番染色体の欠損はMDS患者に最も多い異常で、見つかると治療が困難だっただけに原因遺伝子の特定は画期的だ。理論的には、欠損した遺伝子の働きを補う物質を薬剤にすることで、治療法の開発も期待できる。

(2013年9月10日朝刊掲載)

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