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首相「核の情報公開を」 官民協議 軍縮へ保有国に訴え

 政府は9日、来年1月に迫る核拡散防止条約(NPT)再検討会議を前に、核兵器保有国と非保有国が核軍縮の進め方を探る官民会合をオンラインで開いた。岸田文雄首相(広島1区)は「核戦力の透明性を高めることこそが核兵器削減の第一歩だ」と訴え、全ての保有国に情報公開を求める考えを示した。

 再検討会議での合意形成に向け、核軍縮・不拡散担当の寺田稔首相補佐官(広島5区)を関係国に派遣することも明らかにした。

 官民会合は首相が外相時代の2017年に設けた「賢人会議」を引き継ぐ形で3回目。歴代首相で初めて参加した。交渉決裂に終わった15年の前回NPT再検討会議の反省を踏まえ、「首相自ら核兵器削減に向けた強い決意を示した」(外務省幹部)という。

 首相はあいさつで、中国や北朝鮮を念頭に核戦力を不透明な形で増強する動きやミサイル技術の高度化に懸念を示すとともに、「立場の異なる国々の間で分断が深まり、核軍縮を協力して前に進めるための共通の基盤が失われつつある」と危機感を示した。

 こうした状況の中で、核兵器の保有数を再び開示し始めた米国の動きを歓迎すると表明。「全ての核兵器国に、核弾頭数や運搬手段を含む核戦力についてのさらなる情報開示を求めていく」と述べた。

 非公開の協議では、各国の政府代表や被爆地広島、長崎を含む国内外の有識者15人が、再検討会議で議長を務めるアルゼンチンの外交官スラウビネン氏を前に、核軍縮のアプローチなどについて議論を深めた。国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長も参加した。

 再検討会議は来年1月4~28日に米ニューヨークの国連本部で開かれる。(樋口浩二)

(2021年12月10日朝刊掲載)

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