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被爆前の広島 美大生が描く 中区出身 武蔵野美術大の辰上さん 「消えた街 現在と重ねたい」

 広島市中区出身の武蔵野美術大4年、辰上奈穂子さん(22)=東京都小平市=が被爆前の広島の街並みをイラストに描いている。当時の写真や証言などから想像を膨らませ、原爆が奪った日常を切り取った。1月にも30枚の絵を画集に収め、体験を証言してくれた被爆者たちに贈る。

 元安川で遊ぶ子どもたちや灯火管制下に暗い路地裏を歩く恋人同士、学生でにぎわう街角の夜市―。1940~44年前後の光景は子どもの目線から描かれ、どれも温かい雰囲気に包まれている。

 辰上さんは、広島に関連した卒業制作のテーマを模索する中で「原爆で消えた風景を想像し、自分が実際に見ている現在の広島の街と重ね合わせたい」と思い立ったという。就職活動を終えた今年6月に帰省し、タブレット端末のアプリを使って描き始めた。

 被爆前の写真約1200枚を掲載する本紙連載「ヒロシマの空白 街並み再現」のウェブサイトを参考に、本通りや福屋、元安橋周辺の情景を細部まで再現した。被爆前の広島市中心部で育った被爆者の森下弘さん(91)や新井基宜さん(94)、大伯母の小川輝子さん(95)たちから幼少期や青春の思い出を聞いた。

 「写真や証言と同じ場所に立つと、過去に生きた人たちとのつながりを感じた」と辰上さん。作品の一部をツイッターで公開している。https://twitter.com/1202chita(桑島美帆)

(2021年12月10日朝刊掲載)

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