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被団協 代表団派遣断念 NPT会議 コロナ禍で制限 核軍縮に影「大変残念だ」

 来年1月に米ニューヨークの国連本部で開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議について、日本被団協が被爆者の代表団の派遣を正式に断念したことが11日、分かった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う判断。被爆者が核兵器廃絶を願う声を直接、国際舞台に届ける貴重な機会だけに、核軍縮議論や世界の反核世論にも影響を与えそうだ。(中川雅晴、水川恭輔)

 原則5年に1度の再検討会議は、核保有国を含む条約加盟国が核軍縮の進展を点検し、道筋を話し合う唯一の国際会議。被団協は2005年から代表団を派遣し、原爆展の開催や街頭デモ、証言活動などを通じて核兵器の非人道性や廃絶を訴えてきた。今年1月に発効し、来年3月に初の締約国会議を開く核兵器禁止条約の制定に向けてもアピールを続けてきた。

 被団協の田中熙巳代表委員(89)は「被爆者が直接体験を伝え、各国代表らに働き掛けることには大きな意義があった。核兵器禁止条約発効後の初めての再検討会議であり、大変残念だ」と語る。代表者の派遣は引き続き模索するという。

 被爆者の高齢化から大規模な代表団派遣は「今回が最後になる」との見方もあった。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(79)は「国連本部の入場が制限され、広島市長なども断念した状況では仕方がないとはいえ、今回も現地の市民に証言して原爆の悲惨さを伝えたかった。コロナさえなければ」と話している。

 再検討会議は当初、昨年4~5月に予定されていた。被団協は被爆者を含む50人規模の代表団派遣を計画したが、コロナ感染拡大で会議自体が延期となったことに伴い中止した。

 来年1月4~28日の開催決定を受け、改めて派遣を検討していた。国連は感染拡大防止を目的に非政府組織(NGO)の参加を限定していることに加え、高齢で持病を抱えた被爆者を含む代表団の派遣は困難と判断した。05年の会議以降、国連本部ロビーで開いている原爆展は実施する。

(2021年12月12日朝刊掲載)

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