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核軍縮へ「文書採択を」 NPT加盟国に書簡 広島市長

来月会議に期待

 来年1月に米ニューヨークの国連本部である核拡散防止条約(NPT)再検討会議を前に、平和首長会議(会長・松井一実広島市長)は13日、再検討会議で核軍縮を建設的に議論し、具体的な取り組みを盛り込んだ最終文書をまとめるよう求める公開書簡を、全てのNPT加盟国に送った。松井市長は同日の記者会見で「文書採択に期待したい」と述べた。(小林可奈、明知隼二、岡田浩平)

 2015年にあった前回の再検討会議では、核兵器の非人道性から法的禁止を求める非保有国と段階的な核軍縮を主張する保有国が対立。中東の非核化を巡っても溝は深く、最終文書を採択できずに決裂して閉幕した。

 平和首長会議の書簡では核兵器廃絶の追求はNPT加盟国に課された「法的義務」と指摘。核兵器保有国が軍拡競争を繰り広げる現状に「核兵器廃絶に向けた交渉を共に始める計画すら立てていない」として落胆と懸念を表明している。

 その上で加盟国に、これまでに再検討会議で合意してきた核軍縮に向けた行動計画などについて「期限を定めた上で履行するための具体的措置」を要請した。1月に発効した核兵器禁止条約についても、NPTと「相互に補完し合うもの」との認識に立って議論を進めるよう求めた。

 また松井市長は新型コロナウイルスが収束しない中、1月4日からの再検討会議に合わせた渡米を断念すると正式に表明した。理由については「会議場へのアクセスもままならず、参加者との接触も難しい」と説明。「核軍縮を進める重要性を直接訴える貴重な機会が失われ、大変残念だ」と述べた。平和首長会議の副会長を務める田上富久長崎市長もこの日、渡米断念の考えを明らかにした。

 会議ではNGO(非政府組織)が発言する枠があり、両市長はその時間で発言の機会をつくるよう調整している。会場の国連本部では原爆ポスター展を開く予定だ。

 広島県もこの日、湯崎英彦知事や県職員が渡米しての参加を見送る方針を明らかにした。代わりに、会議に合わせたオンラインのシンポジウムの企画を進めている。会場周辺では、核兵器保有国を含む形で廃絶の合意を2030年までに結ぶ「ひろしまイニシアチブ」を各国の代表団にPRする展示を計画している。

(2021年12月14日朝刊掲載)

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