社説・コラム

　この時季の深夜テレビ桟敷は厚手の上着と靴下が欠かせない。ブラシで懸命に氷をこする選手を見れば、寒いとも言っていられないけれど。幾度も「よし」と声が漏れ、家族が起き出さないかと気にかかる▲北京五輪出場を懸けたカーリングの最終予選がオランダで開幕した。女子日本代表のロコ・ソラーレは初戦から３連勝と抜群の滑り出しを見せる。けさは未明から強豪英国戦とあって、早起きした人も多いことだろう▲相手の次の一投を読んでは先回りしたり、はじき飛ばしたり。「氷上のチェス」とも呼ばれる頭脳戦に、こちらの眠気も吹き飛ぶ。一方、その北京五輪に政府使節団を送らないという米国などの「外交ボイコット」に、果たして次の一手はあるのか▲ウイグル族の人権を踏みにじる中国政府の姿勢を許してはならない。とはいえ、選手団を派遣しないという全面対決に陥る事態も避けたい―。思惑は分かるものの、効果は見えてこない▲中国側が「誤った行為の代償を払うことになる」と報復をちらつかせるのも、見ていてうんざり。ロコ・ソラーレの「もぐもぐタイム」にならい、お互いが政治戦のリンクからいったん離れ、頭を冷やしてみては。

（２０２１年１２月１４日朝刊掲載）