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岩国飛来のF35A 帰還 米軍の全12機 基地機能強化に懸念

 岩国市の米軍岩国基地に米アラスカ州の空軍基地から飛来していたステルス戦闘機F35Aのうち、4機が16日、離陸した。既に岩国を離れた8機と合わせ、全12機が帰還した。3日の第1陣の飛来以降、激しい訓練により周辺の騒音は大幅に増加。台湾海峡を巡る米中の緊張が高まる中、岩国への米空軍機の飛来が増えており、市民団体は機能強化に懸念を深めている。

 16日午前6時55分ごろ、4機のF35Aが岩国基地を離陸した。いずれも広島県方面へ向かったとみられ、廿日市市役所には同時刻ごろ「散歩中に大きな音がした」などの苦情が市内3地域から寄せられたという。

 F35Aは3日に4機が岩国に飛来し、10日までに計12機が到着。離陸直後、ほぼ垂直に急上昇するなどの激しい訓練を繰り返した。

 岩国市によると、基地南側の尾津町で人がうるさいと感じる70デシベル以上の騒音は3~15日に809回を記録した。滑走路沖合移設以降で1カ月の最多は3月の1746回。半月としては異例の多さだった。この間の市民の騒音苦情も329件を数えた。中でも9日は2021年度の1日当たりで最多の64件に達した。

 米海兵隊と海軍の拠点である岩国基地には20年以降、空軍機の飛来が相次ぐ。20年12月にはB1戦略爆撃機2機が「受け入れ能力の確認」を目的に約2時間、滞在した。21年3月にもステルス戦闘機F22ラプター6機が1カ月間、訓練を繰り返した。

 背景には、米軍が18年以降の新たな戦略に基づき、競争国が予測できないよう部隊を運用していることがある。特に太平洋空軍は台湾海峡有事を念頭に、戦闘機部隊を必要に応じて迅速に各地に派遣する訓練を繰り返している。F35Aの飛来について、岩国基地報道部は「動的戦力運用の一環」と説明した。

 岩国基地の機能強化に反対する市民団体の久米慶典顧問は「米軍が予測不可能な運用をする限り、今後も岩国への戦闘機の突然の飛来が続く。騒音や事故の危険は増している」と訴えている。(永山啓一)

(2021年12月17日朝刊掲載)

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