×

ニュース

広島・福島「核」追うアニメ 大震災被災者を発信するグループ制作 市立大生 取材などで協力

 東日本大震災で被災した福島の人たちの物語を発信している一般社団法人まち物語制作委員会(広島市西区)が、新作アニメーション「ふくしま原発はじまり物語『峠』」(約57分)を作った。広島への原爆投下から福島第1原発事故まで、核を巡る国内の出来事を追いかける内容。今回は初めて、広島市立大の学生が制作に加わった。(田中美千子)

 主人公は1949年に福島で生まれ、原発事故で被災した男性。その生い立ちに重ね、米下院議員が広島に原発を建てる決議案を提出したこと(55年)、原爆資料館(中区)で開かれた原子力平和利用博覧会(56年)などをたどっていく。

 脚本、作画は委員会代表理事の福本英伸さん(65)が担った。福島に通い、自らが手掛けてきた紙芝居のアニメ化を進めており、今回で7作目。やはり紙芝居がベースだが、調べるうちに見えてきた「ヒロシマとフクシマの歴史的つながり」を伝えようと、ストーリーを大幅に変えたという。

 「時代考証が要る」と悩んでいた際、協力を申し出てくれたのが、市立大2年の佐藤優さん(20)。福本さんが同大講師を務めた縁で知り合った。原発関連の資料を読み込み、関係者の聞き取りを実施。元広島市長の平岡敬さん(94)からも、新聞記者時代に原子力平和博が開かれた際の受け止めなどを聞いたという。

 佐藤さんは「私自身、初めて学ぶことが多かった。エネルギー政策の行方を握る同世代に見てほしい」。福本さんも「広島の人間としてどうしても作りたかった。世界的なうねりの中で原発が広まった経緯を知り、考えを巡らせるきっかけにしてほしい」と願う。

 制作中のDVDと絵本のセットで来年2月から販売し、その収益で全国の学校や図書館に寄贈する予定。広島と福島で上映会も開く。同委員会☎090(9734)9389。

(2021年12月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ