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核保有5ヵ国 対話重視 NPT会議 共同文書提出

 来年1月4~28日に米ニューヨークである核拡散防止条約(NPT)再検討会議を前に、米ロ英仏中の核兵器保有5大国が意見表明となる作業文書を共同で提出したことが21日、分かった。核兵器の使用リスクを減らす方策を示し、対話の重要性を強調している。専門家によると、保有5大国による作業文書の提出は珍しい。決裂した前回会議を踏まえ、成果を出すための貢献を示す狙いがあるとみられる。(小林可奈)

 文書は7日付。再検討会議に向け「核のリスクを減らすため適切な措置を取る」と表明。保有国が誤解やコミュニケーション不足から核兵器を使うリスクを避けるための3要素として、①対話を通じた保有国の信頼関係の構築②外交や軍事関係者の意見交換などで透明性を高める③外交的な手段などでの危機管理-を列記した。

 手段としては、首脳間のホットラインや2国間の定期的な協議、互いの国を核兵器の照準から外すことなどを挙げた。

 文書では「より安全な環境を築くことは国々の責務」と明記。安全保障の議論への参画や対話など非保有国が貢献する必要性も訴える。一方で、NPTの柱の一つである核軍縮の具体策には踏み込んでいない。

 作業文書は各国の意見を示す参考資料で、来年1月の再検討会議に向け、21日時点で40文書が発表されている。長崎大核兵器廃絶研究センターの中村桂子准教授によると、5大国は同会議のたびに作業文書を出すわけではないという。

 5大国の狙いについて中村准教授は「会議の成功に向けた保有国の貢献を目に見える形で示そうとしている」と指摘。「米ロ、米中間でさまざまな対立がある中、足並みをそろえたことは最終文書の採択に向けた好材料の一つで、バイデン米政権が前政権より前向きに取り組もうとしている姿勢もうかがえる」とした上で「リスク削減は核軍縮に代わるものではない。核軍縮の具体的な方策を注視する必要がある」と強調する。

(2021年12月22日朝刊掲載)

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