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「海自の歌姫」快走中 倉敷出身の三宅3等海曹 デビューCDが1位 

 海上自衛隊東京音楽隊の歌手で、3等海曹の三宅由佳莉さん(26)=倉敷市出身=のデビューCDアルバムが、ヒットしている。音楽情報会社オリコンの週間チャートのクラシック部門で、8月28日の発売から2週連続で1位を記録。注目を浴びる“海自の歌姫”は「皆さんの身近な存在になれてうれしい」と喜んでいる。(藤村潤平)

 アルバム「祈り~未来への歌声」は、東日本大震災の被災者に向けた東京音楽隊のオリジナル曲「祈り」や「ふるさと」「アメイジング・グレイス」など12曲を収録。同僚の演奏をバックに、自衛官23万人で唯一の専属歌手である三宅さんが澄んだソプラノを響かせる。

 岡山市中区の県立岡山城東高から、日本大芸術学部の声楽コースへ進学。「舞台上で歌うのが快感」と、ミュージカル女優を目指していた。夢かなわず大手百貨店への就職内定を決めた後、海自の音楽隊が初めてボーカルを募集しているのを知った。「最後のチャンスかもしれない」。迷いはなかった。

 入隊した2009年、新人の女性自衛官を集めた5カ月の教育訓練があった。外部との連絡を絶ち、ひたすら走り、泳ぎ、カッターをこぐ。分刻みの生活で、私語も許されない。過酷な状況下、上官に促され「翼をください」を歌った。聴いていた同期が緊張を解き、涙を流す姿を見て「人のために歌うということの意味が初めて分かった」と振り返る。

 歌う機会は、式典や儀式、隊員の士気高揚、地方公演などさまざま。「自己表現とは少し違う。聴く人がいて、求められているから、私は歌い手として存在できる」

 テレビのニュース番組で流れた歌う姿がレコード会社の目に留まり、CD化が実現した。「自衛官として歌っていることが皆さんに受け入れられて光栄」とかみしめる。メーンの舞台は自衛隊だが、今後もリクエストに応じて、童謡や演歌、ボサノバまで、聴く人の心に歌声を届ける。

(2013年9月16日朝刊掲載)

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