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反戦掲げ集った若者の思い今に ベトナム戦争時 岩国で営業の喫茶店「ほびっと」 有志28人、本を出版

 ベトナム戦争が泥沼化した1970年代、米軍岩国基地近くの岩国市今津町に4年間だけ反戦運動をする若者が集まる喫茶店「ほびっと」があった。開店から50年を前に店に関わった有志28人が思い出をつづった本を自費出版した。執筆者の一人で同市の児童文学作家岩瀬成子(じょうこ)さん(71)は「若者が本当の平和を考え、試行錯誤し、たくさんの人に影響を与えた店。そういう場があったことを知ってほしい」と呼び掛けている。(永山啓一)

 「『ほびっと』とわたし~それぞれの50年」(A5判、131ページ)。ほびっとは72年2月、反戦米兵を支援する京都や福岡の学生たちが手作りで開いた。ログハウス風の店内にはボブ・ディランやドアーズの曲が流れ、漫画雑誌「ガロ」などが並んだ。ファッション誌でも紹介された店は76年1月の閉店まで県内外の若者のたまり場だった。

 当時のテレビは連日、米軍がベトナムで空爆する映像を流していた。若者は岩国基地のそばでたこ揚げをして米軍機の離陸を阻止したり、基地内の反戦米兵と協力して機関紙を発行したりした。今回、出版した本には、多くが70代となった当時の店員や常連客たちが青春時代を振り返り、その後の人生や近況、軍事力を強める岩国基地への思いも盛り込んでいる。

 同市玖珂町出身の岩瀬さんは、店内で講演した作家との出会いをきっかけに児童文学の道へと進んだ。「店に来た若者同士が社会問題について自由に発言し、人と出会い、行動していた」と懐かしがる。

 ほびっとの開業や、警察や米軍の圧力による経営悪化の経緯は初代マスターの故中川六平さんの著書「ほびっと 戦争をとめた喫茶店」にも詳しく書かれている。

 元店員で本の出版を呼び掛けた鷲野正和さん(71)=福岡県福津市=は「ほびっとに関わった人はそれぞれの人生を歩んだが、戦争のない社会を求める気持ちは変わっていなかった。若い人にこそ当時の様子や、今に続く思いを知ってほしい」と話している。2千円。鷲野さん☎090(1081)0437。

(2021年12月23日朝刊掲載)

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