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白内障手術歴も認定 「黒い雨」救済広げる 厚労省改正案

 広島原爆の「黒い雨」の被害者救済を巡り、厚生労働省は23日、2022年4月に運用を始める新たな被爆者認定指針の改正案を広島県、広島市に示した。本人の証言や在学記録などから「黒い雨に遭った可能性が否定できない」場合は被爆者と認める。がんや白内障など11疾病の認定要件を維持した上で、白内障については手術歴がある人も対象とする。県、市は対応を保留し、27日までに受け入れるかどうかを回答する。

 広島県、市に長崎県、市を交えた非公開の第3回オンライン協議で示した。黒い雨被害を訴えた原告全84人を被爆者と認めた7月の広島高裁判決を踏まえ、原告と同じような場所や時間で黒い雨に遭ったことが確認できることを基本に、遭ったことが否定できない場合も被爆者と認める。本人の証言や在学記録など生活実態を示す資料での確認を想定している。

 がんや白内障、造血機能障害など11疾病にかかっていることを要件として維持しながらも、白内障については発症中でなくても手術歴があれば新たに被爆者と認めるとした。広島高裁判決は、11疾病の有無にかかわらず認定するべきだとしていた。

 関係者によると、厚労省は指針改正に伴い新たに1万人以上の認定につながると分析。医療費などの必要経費が22年度政府予算案に盛り込まれる見通しだ。

 厚労省の担当者は協議後、「被害者の証明の負担を軽減し、幅広い救済につなげたい」と説明。広島県、市から一定の評価を得たものの、「疾病要件などを検討する」との回答があったとした。白内障に限り救済対象を広げるのは、原告に手術歴を踏まえて被爆者認定された人がいる点を考慮したという。

 長崎の被害者救済は、関係する訴訟で国側が勝訴したことなどを踏まえ「広島と同じに扱うことは難しい」とした。長崎県、市は納得せず、厚労省は継続協議を求めた。(樋口浩二)

(2021年12月24日朝刊掲載)

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