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社説・コラム

社説 米軍駐留経費負担 言いなりの関係 改めよ

 日米両政府が2022年度から5年間の在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を1兆551億円とすることで合意した。年平均は2110億円で、現行より100億円近くの増額となる。

 米側はトランプ前政権に続きバイデン政権も大幅な増額を求めていた。政府は中国や北朝鮮などへの対応強化を理由にするが、米側から負担増を求められれば、あらがえない従属的な関係があらためて浮かび上がる。

 政府は、思いやり予算の通称を改め、今後は「同盟強靱(きょうじん)化予算」と呼ぶと決めた。予算の性格を適正に反映していないからだと言う。同盟強化を名目に日本側の負担がさらに重くならないか、注視しなければならない。

 日米地位協定で在日米軍の駐留経費は米側負担が原則となっている。それを米側に配慮する形で1978年度に日本側の一部負担が始まった。基地の光熱水費や従業員の労務費などを協定の枠を超えて日本側が支払っている。

 その金額は原則5年ごとに結ぶ特別協定で定めているが、今回は26年ぶりに新たな費目として「資機材調達費」が設けられた。日米共同訓練などで使用する機材の費用などに5年間で最大200億円を支出する。

 一方で、政府は批判の強かった米軍基地の光熱水費を大幅に削減。そうすることで増額への批判をかわしたいのだろう。ただ訓練に伴う資機材の調達は米側の意向次第で変動する。訓練回数などが増えれば、費用が膨らむ可能性がある。

 そもそも自衛隊を含む抑止力強化のための費用という点でこれまでとは性質が違う。思いやり予算に含めること自体に無理があるのではないか。新たな費目を設けて経費を積み増す手法だとすれば容認できない。

 適正な執行にも疑問がある。過去に米兵のプール付き住宅やゴルフ場整備などにも使われ、批判の的となった。米軍任せになっている使い道をどうチェックするのか、政府は説明する義務がある。

 思いやり予算の負担割合が他国より際立って高いことも見過ごせない。04年公表の米国防総省の報告書では、韓国が40%、ドイツ32%に対し、日本は74%と厚遇ぶりが突出している。米側に負担の在り方の見直しを求めていくことが欠かせない。

 90年代に日米で合意した沖縄県の米軍施設の整理縮小計画に関する「日米特別行動委員会(SACO)関係経費」や、同県名護市辺野古の新基地建設などに関する「米軍再編経費」なども日本は負担している。米軍再編経費は負担の始まった06年度から、20倍以上の2044億円に膨らんでいる。

 これらに加え、基地周辺自治体への交付金などを含めれば在日米軍の関係経費は年間約8千億円を超す。巨額の予算が細分化されることで実態が見えにくくなっている面は否めず、看過できない。

 米軍機の事故やトラブルも沖縄をはじめ各地で相次いでおり、財政面以外の負担感も年々増している。  政府は日米同盟の深化を安全保障の中心に据える。そうであるなら、在日米軍にさまざまな特権を与えてきた地位協定を国民が納得できる形に改めることが欠かせない。

(2021年12月24日朝刊掲載)

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