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広島県・市 「配慮」と評価 「黒い雨」 救済拡大の指針改正案 残った発症要件 近く賛否回答

 広島原爆の「黒い雨」被害者の救済を巡り、厚生労働省が23日に示した指針の骨子案は、黒い雨に遭ったことが否定できず、国が定める11疾病を発症していれば被爆者として認めるという内容だった。広島県と広島市は「幅広い救済を求める意見に配慮してもらった」と一定に評価した。ただ、疾病の発症が要件として残っている。県と市はそれぞれ協議し、27日までに国に対して賛否を回答する。(明知隼二、松本輝)

 厚労省の案では、従来のように黒い雨に遭った区域で一律に線引きするのではなく、原告全84人を被爆者と認めた7月の広島高裁判決を踏まえ、雨に遭った場所や時間帯、降雨状況が原告と「同じような事情」にあった人を被爆者として認めるとしている。11疾病の発症が要件に残っているが、白内障は手術歴があれば被爆者と認定するという。

 「幅広い救済を求める意見に配慮してもらった」と市原爆被害対策部の河野一二部長。疾病要件については「切り離すべきだと主張してきたが、残っている。救済につながるかを見極めて判断したい」と話した。

 県被爆者支援課の二井秀樹課長は「(援護対象区域の拡大を求めてきた県市の)意見をかなり受け入れてもらっている」と評価。疾病要件については市と同様の考えで「これまで求めてきた内容と比べて了解できるか、総合的に検討する」と語った。

 被爆者健康手帳を申請中の人からも歓迎の声が聞かれた。1歳の時、爆心地から約13キロの河内村(現広島市佐伯区)で母の背中で黒い雨に打たれたという植田博道さん(78)=佐伯区五日市町=は「被爆者と認めてもらえそうで、とりあえず安心した」。昨春ごろから白内障を患い、今年8月に手術を受けた。白内障の手術歴のある人を対象に含める今回の案に基づけば、手帳が交付される可能性が高い。

 植田さんと同様、市に手帳交付を申請している松尾美智子さん(86)=同区湯来町=は長年、子宮筋腫や脳動脈瘤(りゅう)などの病に苦しんできた。自身への手帳交付の道は開けそうだが、発症していない仲間のことが気になる。「国は幅広く被爆者と認定してほしい」と願う。

(2021年12月24日朝刊掲載)

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