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「黒い雨」救済案受け入れ 広島県・市 早期決着を優先 22年4月から新認定

 広島原爆の「黒い雨」に遭った人の被爆者認定を巡り、救済範囲を広げる厚生労働省の指針の改正案について広島県と広島市は24日、受け入れると決めた。県は厚労省に伝え、市も「反対はしない」と回答した。改正案には県、市の要望が反映されていない点があるものの、早期救済を優先した。2022年4月から新たな認定制度が導入される見通しとなった。(水川恭輔、岡田浩平、樋口浩二)

 23日に厚労省が提示した指針の改正案では、本人の証言や在学記録などから「黒い雨に遭った可能性が否定できない」場合は被爆者と認定。がんや白内障など11疾病の発症を要件として残した上で、白内障については発症中でなくても手術歴があれば認定対象とする方針を打ち出した。

 県、市ともに疾病の要件をなくすよう求めてきたが、湯崎英彦知事は24日の記者会見で、白内障の手術歴がある人も対象となったことを挙げ「幅広い方が疾患要件を満たすことになると認識している」と一定に評価し、受け入れる考えを示した。指針から疾病要件を外すよう引き続き求めていく考えも示した。

 松井一実市長は疾病要件があるため「賛成はできない」としつつ、「限りなく多くの方が来年度早々に被爆者健康手帳を出してもらえることになると思う」と説明。反対はしないと厚労省に伝えたと明らかにした。来年度当初からの制度運用に向け国と審査の実務について協議を進める。

 厚労省はこれまでの県、市の調査を基に、新たに1万1千人程度の被爆者認定につながると試算している。原子爆弾被爆者援護対策室は「提案を受け入れていただき、ありがたい。長崎県、市への提案もあるので正式には回答期限の27日にコメントしたい」とする。

 「黒い雨」を巡っては、国は援護対象区域内で雨に遭った人が11疾病を発症した場合に被爆者と認定し、手帳を交付しているが、広島高裁が7月、同区域外で浴びた原告84人全員への手帳交付を命じた。国は上告を断念し、「原告と同じような事情」にあった人の救済を検討すると表明。厚労省は広島県、広島市などと協議を続けてきた。

(2021年12月25日朝刊掲載)

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