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疾病要件「新たな分断」 全員救済望む被爆者ら憤り

 厚生労働省の新たな指針案を広島県と広島市が受け入れた24日、訴訟を通じて「黒い雨」被害者の幅広い救済を求めてきた被害者や弁護士、被爆者からは批判の声が上がった。

 「提訴から6年以上、全ての黒い雨被害者の認定のために闘ってきた。今更こんな案は絶対に認められない」。訴訟の原告団長だった高野正明さん(83)=広島市佐伯区=は中区での記者会見で語気を強めた。

 弁護団の中心だった竹森雅泰弁護士は、指針案で国が定める11疾病の発症が認定要件に残ったのを問題視した。県、市に対し「幅広い救済のため、ずっと同じ方向を向いていたはずなのに、なぜ疾病要件を認めてしまうのか」と憤った。

 高野さんが世話人を務める、原告以外の被害者を支援する会はこの日、疾病要件を外すよう求める意見書を厚労省と県、市に送った。「同じように黒い雨に遭い、不安を抱えて生きてきた被害者を、発症したか否かで線引きすることになる。新たな分断が生じる」として協議継続を求めた。

 広島の被爆者7団体もこの日、11疾病を被爆者認定の要件にしないよう求める要望書を厚労省に出した。

 市役所での記者会見で、県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(79)は「対象者を限ろうとする厚労省の姿勢が見え、同意できない」と主張した。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(77)は「疾病を要件にするのは7月の広島高裁判決と異なり、全く道理に合わない」と非難した。(松本輝、明知隼二)

(2021年12月25日朝刊掲載)

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