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被服支廠の記憶 生徒が継ぐ 被爆者切明さん証言集 市民グループ刊行

基町高生が挿絵 盈進中・高生文字起こし

 広島市内最大の被爆建物、旧陸軍被服支廠(ししょう)(広島市南区)についてよく知る被爆者の切明千枝子さん(92)=安佐南区=の証言集を、市民グループ「ノーモア・ヒバクシャ継承センター広島」(足立修一代表)が刊行した。基町高(中区)と盈進中・高(福山市)の生徒も作成に携わった。(湯浅梨奈)

 被服支廠の近くに住み、母が経理担当として働いていたことや、仮装大会などの娯楽の様子を紹介。動員学徒として軍服の洗濯作業をした際に「ボロボロになったような服を、もういっぺん洗濯してから使おうなんて、さすがにこんなことで日本は勝てるんだろうかと思いましたよ」と語るなど、日本が推し進めた戦争の現実も浮き彫りにする。

 基町高創造表現コース2年のサンガー梨里(りり)さん(17)が、文中の挿絵を担当。軍服や手旗信号のイメージ図などを、約1カ月間試行錯誤して描いた。被爆電車は「画用紙に筆圧で傷を付けながら、黒焦げになった質感を水彩絵の具と墨で表現した」

 書名は「切明千枝子 ヒロシマを生き抜いて Part2」で、切明さんの証言集としては2冊目。県立広島第二高等女学校(現皆実高)4年だった時の被爆体験や、臨時救護所となった被服支廠の惨状をつづる。県が2019年末に被服支廠の「2棟解体、1棟外観保存」の原案を示したのを機に、全棟保存につなげようと刊行を決めた。

 盈進中・高ヒューマンライツ部の生徒が、長時間に及ぶ証言の文字起こしをした。サンガーさんは「歴史を伝える貴重な証言を残す作業に、絵を通して関わることができた」、切明さんは「若い人たちが思いをくみ取り本にしてくれた。戦争が繰り返されないよう読んでもらいたい」と話す。

 A5判139ページ、千円。県立図書館と市立図書館に寄贈した。継承センター広島h.conveyrelay.c@gmail.com

(2021年12月26日朝刊掲載)

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