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ツツ元大主教が死去 南ア 広島から核廃絶願う 「優しい人」悼む声

 南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)撤廃に尽力し、1984年にノーベル平和賞を受けたデズモンド・ムピロ・ツツ元大主教が26日、ケープタウンで死去した。90歳だった。

 「優しい人だった」―。デズモンド・ムピロ・ツツ元大主教は、2006年11月に広島市でノーベル平和賞の受賞者3人が集った「広島国際平和会議」に参加しており、関係者はツツ氏が会議で発した核兵器や戦争がない世界への願いを込めたメッセージや柔和な人柄を思い起こしていた。

 「本当に優しい人」と話したのは、日本聖公会神戸教区(神戸市)の小林尚明主教(61)。当時は広島復活教会(広島市中区)の牧師で、ツツ氏のアテンド役を務めた。「命を懸けて平和のためにたたかった人がたどり着く境地」と感じたという。1986年の初対面時は「平和の戦士」の印象だったが、この時は温厚な優しい様子で「ギャップに驚いた」と振り返った。

 ツツ氏はダライ・ラマ14世、ベティ・ウィリアムズ氏とこの会議に参加。今年10月に亡くなった広島県被団協前理事長の坪井直さんとも対話した。市民との交流会にも赴き、核兵器や戦争をなくすため、宗教を超えて手を取り合う必要性を訴えた。

 09年には世界のノーベル平和賞受賞者と17人の連名で、各国の政治指導者や市民に核兵器廃絶に向けて行動するよう訴える「ヒロシマ・ナガサキ宣言」を中国新聞を通じて発表した。(根石大輔)

(2021年12月27日朝刊掲載)

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