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連載・特集

中国5県 2021年回顧

 新型コロナウイルスが2021年も中国地方5県を苦しめた。広島、岡山両県は2度、新型コロナ対応の改正特別措置法に基づく政府による緊急事態宣言の対象となり、県民や事業者に強い行動制限を課した。5県のトップたちはそれぞれに、感染拡大の防止と社会、経済活動の両立で力量を問われた。防衛、外交や原発など、国政が絡む難題も相次いだ。5県の県政担当記者が、多難な一年を振り返った。

広島

湯崎氏に歴代最多票

 広島県の湯崎英彦知事は任期満了に伴う11月14日の知事選で、歴代最多の70万7371票を獲得し、新人2人の挑戦を退けて4選を果たした。自ら多選の弊害を指摘してきたが、新型コロナ禍から社会、経済活動を回復させる局面で「投げ出したくない。修復してから、誰かに渡したい」と立候補し、信任を得た。

 選挙戦では人を集める街頭演説を一切せず、選挙カーも走らせなかった。ウェブ上で政策や主張を精力的に動画配信し、23市町別に「集会」を開催。デジタル選挙を貫く姿に、3期12年の実績と知名度に支えられた余裕を感じさせた。

 ただ、ポスター張りを依頼した県郵政政治連盟支部で、多くの郵便局長が告示日に一斉に年休を取得して対応したと問題視された。自身の後援会が13、14年、政治資金規正法の上限を実質的に超える年300万円ずつの寄付を1人から受けていた疑いも浮上。クリーンさを売りにしてきた政治活動でつまずいた面はある。

 県政運営は今年も新型コロナ対策に追われた。感染を短期間で抑え込もうと、県独自の判断で政府にまん延防止等重点措置などを求めたものの、思い通りにいかず、感染拡大と2度の緊急事態宣言につながった。27日には新変異株「オミクロン株」の県内初の感染者を発表するなど、年末年始も気が抜けそうにない。

 懸案のうち、広島市南区に残る最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」は所有3棟の耐震化を決め、事実上の保存へ道筋を付けた。市が中区で22年2月に着工するサッカースタジアムでは、県負担分の事業費の予算案計上を越年させた。(岡田浩平)

山口

基地 見えぬスタンス

 山口県は新型コロナのワクチン接種が全国トップクラスの速さで進んだ。1月から県と市町、医療機関が連携して準備した成果といえるだろう。県のリーダーシップを評価する声は少なくなかった。

 一方、防衛、外交政策を巡っては、国の考えを尊重しつつ「言うべきことは言う」とする県のスタンスがいまひとつ見えない。中でも岩国市の米軍岩国基地では、大型艦船の寄港が相次ぎ、基地機能の強化を懸念する声も上がっている。

 県内では防衛省が山陽小野田市に「宇宙監視レーダー」の建設を進め、防府市の航空自衛隊防府北基地には人工衛星への妨害を監視する「第2宇宙作戦隊」を新設する。片や萩市と阿武町を候補地とした地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」は配備計画の断念から1年半がたち、12月にようやく地元で説明会があった。外務・防衛担当の閣僚2人は県選出。言うべきことを言いやすい環境にあるはずだ。

 12月下旬には県政を揺るがす事件が発覚した。10月末の衆院選山口3区で当選した自民党の林芳正外相の後援会に入るよう部下に勧誘させたとして、現職の小松一彦副知事が公選法違反(公務員の地位利用)の罪で略式起訴され、辞職した。組織的な選挙違反が横行していた。失墜した信頼の回復はたやすくない。(渡辺裕明)

岡山

知事の支援団体 献金問題が発覚

 岡山県では年の瀬になって、伊原木隆太知事の選挙の支援目的で設立された二つの政治団体への迂回(うかい)献金問題が新たに発覚した。2013年と14年、18~20年の5年間で計3950万円の寄付が政治資金規正法の上限を超えていた。父親と妹2人が寄付者で、いずれも複数の政治団体を経由し、それぞれの政治団体へ金を集めていた。

 個人が一つの政治団体に寄付できる上限は150万円。法律の上限額について伊原木知事は「勉強不足で知らなかった」、父親の一衛氏は「法律にのっとり、各団体を支援していたつもりだ」と話す。県議会の一部には「知らないわけがない」との声もあり、伊原木知事は全容解明とともに県民が十分納得できるまで説明を尽くす必要がある。

 伊原木知事は21年を「コロナに明け暮れた一年だった」と振り返った。第4波時のまん延防止等重点措置の国への要請を巡り、国との間で「正直やりにくい場面もあった」と明かす。第6波に向けては「万全の準備で臨む」と力を込めた。(中島大)

島根

リレー中止検討 反響

 島根県では就任3年目となった丸山達也知事のしたたかさが見えた。2月、新型コロナの影響で打撃を受ける県内の飲食店の支援を国から引き出す狙いで、東京五輪聖火リレーの中止検討を表明。五輪開催の是非論が高まる中で反響を呼んだ。

 政府や東京都のコロナ対応のまずさを批判し、世論を味方につけたとみるや4月に宣言を撤回。結局、リレーは予定通り開催した。政府がその後、各地の飲食店支援にも使える交付金の枠組みを新設すると、「一定の成果」と強調した。

 コロナ対応に追われていた9月には、中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町)が再稼働に向けた国の新規制基準適合性審査に合格。中電や経済産業省から地元同意を求められた丸山知事は、地域の意見集約に向けた手順を着々と進める。

 住民説明会では安全性や避難計画への不安が相次いだが、地元政財界では地域経済や県財政のメリットを期待する声が根強い。「県民目線」を旨とする丸山知事の決断が22年の焦点となる。(松本大典)

鳥取

知事会長に平井氏就任

 鳥取県の平井伸治知事は9月、人口最少の同県から初となる全国知事会長に就いた。知事会新型コロナウイルス対策本部長代行として対策や提言をまとめてきた手腕などへの評価から、過去最多の知事40人の推薦を受け、無投票当選した。

 07年の就任以来、県内外の自治体や団体との連携を重視してきた平井知事は「ともに闘う知事会」を掲げ、国民運動本部設置などの組織改革を決行。日本医師会や経団連との連携に乗り出し、要望団体から運動体への転換を進める。一方、県政との両立で、分刻みの厳しい日程が続く。

 9月には中国電力島根原発2号機が再稼働に向けた国の審査に合格した。30キロ圏の周辺自治体としての中電との安全協定の交渉では、一部改定を引き出した。ただ再稼働などに対する「事前了解権」など2項目は回答が保留され、交渉は越年となった。(小畑浩)

(2021年12月28日朝刊掲載)

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