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連載・特集

2021年県内重大ニュース <上> 平和 最大級の被爆遺構発見

 新型コロナウイルスの感染拡大が、被爆地広島からの平和発信や核兵器廃絶の訴えに影を落とし続けた。関連の団体や施設は活動の縮小を迫られ、イベントの中止も相次いだ。

 8月6日に営まれた広島市主催の平和記念式典は、2年連続で大幅に参列者が制限された。例年の1割に満たない751人に絞り込み、国連のグテレス事務総長も参列できなかった。原爆資料館(中区)は年をまたいで休館。5月と8月にも閉じざるを得なかった。

 来年1月に米ニューヨークである核拡散防止条約(NPT)再検討会議を巡っても、松井一実市長が今月13日、渡米しての参加はしないと表明した。日本被団協は代表団派遣を見送り、広島の被爆者も現地入りを断念。核兵器廃絶を願う声を世界に直接届ける貴重な機会もコロナ禍に阻まれた。

 原爆被害の実態を後世に伝える被爆建物や遺構にスポットが当たった。市がサッカースタジアム建設を予定する中央公園広場(中区)では、旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」の遺構が見つかった。市内の被爆遺構の発掘例としては過去最大級。市は厩舎(きゅうしゃ)跡など一部を移設して保存する方針を決めた。

 広島県は5月、南区の最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」のうち、所有する全3棟の耐震化をすると表明。従来の「2棟解体、1棟の外観保存」から転換した。原爆ドームは5回目となる保存工事が4月に完了。天井の鋼材が焦げ茶色に塗り直され、被爆当時に近い姿を取り戻した。12月には世界遺産登録から25年を迎えた。(久保田剛)

(2021年12月29日朝刊掲載)

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