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連載・特集

変わる街 響く鼓動 広島市中区の中央公園

 戦後復興のシンボルとして整備された広島市中区の中央公園(42ヘクタール)が大きく変わろうとしている。市は2022年、サッカースタジアムを着工。旧市民球場跡地へのイベント広場の整備を始める。文化施設の再配置も市民の賛否を呼ぶ。市が描く未来像を紹介する。(新山創)

サカスタ・広場エリア

あふれる臨場感 一帯の原動力に

 J1サンフレッチェ広島の本拠地となるサッカースタジアムは2月に着工する。現在、建設予定地の広場はフェンスで囲まれ、準備工事のつち音が響く。

 選手が駆け回るピッチと観客スタンドの距離は約8メートル。選手がぶつかり合う音が聞こえるなど臨場感を楽しめる。多様な約3万席を備え、日本代表の国際試合にも対応。約2年後のJリーグ開幕に合わせて24年2月の開業を目指す。

 スタジアム周囲の広場エリアには芝生が植えられ、カフェやレストランなどが並ぶ予定。「地域の子育て世代や高齢者も楽しめ、年間を通じて市外からも人が集まる施設にしたい」。市スタジアム建設部の吉谷勝美部長は力を込める。

 玄関口となるJR新白島駅周辺の商店でつくる白島商店会の石原玄基会長(38)は「広島駅はマツダスタジアムで新しい人の流れができた。サカスタも元気を生む原動力に」と願う。

旧市民球場跡地→イベント広場

好立地生かし集客狙う

 10年間更地だった旧市民球場跡地一帯がいよいよ動きだす。イベント広場に生まれ変わる予定で、4月に着工。23年3月の開業を見込んでいる。

 広場には屋根付きのスペースも整備。千人以上を集めるイベントを年間90日以上開く計画だ。広場を囲むように飲食店や物販施設などを配置する。

 跡地ではスケートボードなどアーバンスポーツ(都市型スポーツ)の世界大会「FISE(フィセ)広島」が開かれ、3月に3回目が予定される。市はアーバンスポーツを楽しむ空間づくりも検討している。

 「平和記念公園のすぐ北側にある好立地。多様なイベントを開き、誰もが訪れたくなる、にぎわいの拠点にしたい」。市の松尾雄三紙屋町・八丁堀地区活性化担当課長は意気込む。

老朽化した市有6施設

移転や廃止検討に賛否も

 公園内には多くの文化施設がある。市は老朽化した市有6施設について、移転や集約を検討している。

 年間39万人が利用する中央図書館は、JR広島駅南口の商業施設「エールエールA館」(南区)へ25年度に移転させる方針を打ち出した。映像文化ライブラリーやこども図書館も一緒に移す計画。「駅に近くて便利」「静かで緑のある現在地がいい」と市民の賛否は割れる。市は今月14日まで新たな図書館の在り方について意見を募っている。

 夏場の2カ月に11万人が訪れるファミリープールも園外移転か廃止を検討中だが、市民の間には反対の声が少なくない。

 公園北側にある広島城三の丸は観光バスの駐車場から、飲食や物販などの「にぎわい施設」へと姿を変える。22年度に設計を始め、24年度の開業を目標にする。刀剣やよろいなど広島城にある資料の展示施設の設計も22年度に着手する。

中央公園
 1949年施行の広島平和記念都市建設法に基づき、国の支援を受けて市が整備した。現在は市有施設のほか、ひろしま美術館、広島グリーンアリーナなどがある。大半は国有地で市が無償で借りている。

(2022年1月4日朝刊掲載)

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