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社説・コラム

天風録 『極超音速というけれど…』

 親に初めて買ってもらったプラモデルは、サンダーバード2号だった。それから半世紀、この英国のSF人形劇は何度見ても飽きない。もちろん公開中の最新作も鑑賞済み、と自慢したいところだが、オミクロンの急拡大を受け、映画館通いはしばし自粛中▲代わりにこちらを見て、と言いたいのだろうか。北朝鮮が極超音速ミサイルの発射実験に成功したと自慢している。最高速度マッハ10が本当だとすれば、くだんの2号よりもかなり速い▲ただ大陸間弾道ミサイルならマッハ20を超える。そんな至極強力な兵器を大量に保有する米国やロシア、中国もそれぞれ、極超音速ミサイル開発に躍起という。北朝鮮ばかりを責めても解決にならないのは明白だろう▲とはいえ、かの国の発射実験に立ち会った指導者たちのふてぶてしい表情には背筋が凍る。いともたやすく命を奪う極悪兵器は、親からもらったおもちゃでは決してない。暴発を防ぐには各国の外交努力が欠かせない▲かの最新作は各種のネット動画配信サービスでも鑑賞できるものの、映画館で味わう臨場感にはかなうまい。ここは、オミクロンがその「超速」の足取りで、一日も早く立ち去ってくれないか。

(2022年1月14日朝刊掲載)

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