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基地の感染対策 募る不安 米軍関係者の低い意識/乏しい情報 岩国の団体 相次ぎ強化要請

 米軍岩国基地が起点とみられる新型コロナウイルスの感染が岩国市を中心に拡大していることを受け、市民団体から基地の対策強化を求める訴えが相次いでいる。背景には米軍関係者の意識の低さや、基地からの情報の少なさからくる不安がある。(永山啓一)

 「世界の中で最も感染者が多い米国の生活スタイルが、そのまま岩国に持ち込まれている」。7日、基地の監視活動を続ける市民団体「愛宕山を守る会」の岡村寛世話人代表は岩国県民局を訪れ、県から基地に対策の強化を強く求めるよう訴えた。市内外の計5団体の代表たちが同席し、国内法に基づく感染対策や外出禁止の徹底などを求めた。

 市議会も基地に対策を強めるよう求める要請書を郵送したほか、複数の市民団体が県や岩国防衛事務所などに個別に要請書を出している。

 基地内では昨年12月以降だけで879人(14日現在)の感染が確認された。1万人超とされる関係者の12人に1人が感染した計算で、割合は岩国市内の10倍余りになる。

 国は、米本土から直接、基地に入る米軍関係者への検査が不十分だったことから基地内でオミクロン株が広がり、市内にも拡大したとみて外出の制限を要請した。

 市内の繁華街では昨年のクリスマス前後、米軍関係者が酒を飲み、マスクをせずに騒ぐ姿が目撃されていた。基地はワクチン接種者を対象に基地内の大半でマスク不要としていた基準を12月29日になって厳しくした。今月4日には基地からの外出を食品の購入や医療機関の受診など生活に欠かせない場合に限った。

 それでも、規制の強化を知らせる基地の公式フェイスブックには、米軍関係者とみられる人物から「明らかにコントロールできないものをしようとしている。マスクは効かない」「基地のみんながオミクロン株に感染したら、このばかげた規制から解放される」などと非協力的な投稿も散見されるのが実態だ。

 さらに市民団体が不満を抱くのが基地からの情報の乏しさだ。基地は感染者の人数以外はほとんど公表しておらず、感染経路や検査数、ワクチン接種率などは不明なままだ。県は感染者の基地の外での行動歴は得られている一方、基地内の情報はないという。

 岩国市の福田良彦市長は7日、基地内でフレデリック・ルイス司令官と会談し、マスク着用の徹底などを求めた。その後の取材に「市民感情を考えると、憤りがあることも承知している」としつつ「感染原因の追究に傾注するよりも、現状をいかに打破するかだ」と、基地との信頼関係を保ちながら対策する重要さを訴えた。

(2022年1月15日朝刊掲載)

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