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韓国人被爆者 念願の「手帳」 広島県庁で取得 交付決定9年

 広島で被爆し、その後韓国に帰国した李石任(イソンイム)さん(75)=慶尚南道昌原市=が24日、広島県庁を訪れ、被爆者健康手帳を取得した。2004年に被爆者健康手帳交付を認められながらも、体調不良などで受け取りに来ることができず、9年近く日本政府の援護を受けられない状態だった。

 李さんは24日午後に広島市安佐南区の病院で健康診断を受け、県に健康管理手当を申請した。認められれば、月3万3570円が支払われる。

 李さんは広島市で生まれ、7歳の時に爆心地から約3キロの東蟹屋町(現東区)の自宅で被爆。両親や妹弟を亡くした。自身は高熱で耳が聞こえなくなり、会話もできなくなったという。

 1945年に帰国。04年7月に支援者を通じて県に手帳を書類申請し、同11月に交付が認められた。当時の制度では受け取りは本人の来日が条件で、李さんは体調不良などで来日できずにいた。

 今回の来日は次女の金容点(キムヨンジョム)さん(48)が付き添って実現した。金さんは「ありがたい。手当が入れば母の生活が少しは楽になる」と気持ちを代弁した。

 県被爆者支援課は「過去に同様の事例はない。交付に時効がないことや渡航費の本人負担がないことは家族を通じ伝えてあった」とする。支援団体「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」(大阪府豊中市)は「海外には援護制度をよく知らない被爆者が多く、個別のより具体的な支援が必要だ」と指摘する。(田中美千子)

(2013年9月25日朝刊掲載)

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