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被爆体験 子や孫が伝えて 広島市 22年度「家族伝承者」養成へ

 広島市が2022年度、家族の被爆体験や平和への思いを本人に代わって伝える「家族伝承者」の養成に乗り出す方針であることが19日、分かった。被爆者の体験を語り継ぐ従来の「被爆体験伝承者」の養成制度を拡充。被爆者が減少し、高齢化が進む中、家族の協力を得て証言活動を引き継ぐ人材の育成に力を注ぐ。

 関係者によると、親や祖父母など家族に被爆者がおり、その体験を受け継いで伝承者として伝えたい人を募る。話し方などの一定期間の研修を経て、原爆資料館(中区)などで講話をしてもらう考えだ。22年度一般会計当初予算案に研修開催などの関連費用を盛り込む方針でいる。

 被爆体験の継承に向けて市は12年度から「被爆体験伝承者」を募集。集まった応募者が、資料館で証言活動をしている被爆者の体験を聞くなど研修を受けた上で、その体験を伝える活動をしてきた。21年度は149人が伝承者として委嘱を受けた。資料館で来館者に講話をしたり、派遣先の学校で児童生徒に体験を伝えたりしてきた。

 市は、従来の伝承者に加えて家族伝承者を養成することで、これまで証言活動をしてこなかった人を含めた幅広い被爆者の体験継承につながると期待。埋もれた被爆体験の掘り起こしや家族間の記憶の継承も見込む。

 厚生労働省によると、21年3月末時点の被爆者健康手帳所持者の平均年齢は83・94歳。被爆体験伝承者の講師も務めた岡田恵美子さんが同4月に84歳で亡くなり、同10月には国内外で体験を伝えた広島県被団協前理事長の坪井直さんも96歳で死去した。被爆者の高齢化や死去に伴い、証言を直接聞くことが難しくなる中、被爆の実態をどう語り継いでいくかが課題となっている。(水川恭輔)

(2022年1月20日朝刊掲載)

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