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連載・特集

『潮流』 記念日の意義

■報道センター長 吉原圭介

 両親の結婚記念日は1月22日、あさってだ。そんな日を認識している子どもは少ないと思うが、なぜ知っているかというと語呂合わせで「いーふうふの日」と自慢していたから。実際に良い夫婦かどうかは別として、節目の日に来し方を振り返り、省みることは大事なのかもしれない。

 13年前のきょう、米国でオバマ氏が大統領に就任した。その年の4月にはチェコの首都プラハで演説し「核兵器のない世界に向けた具体的な措置をとる」と宣言。世界は沸き、その後、ノーベル平和賞を受けた。しかしこの間に核軍縮が進んだのかと言えば、首をかしげるしかない。

 岸田文雄首相は今週、施政方針演説で「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」の創設と、その会議を年内に被爆地広島で開催する方針を打ち出した。各国の現職、元職の政治リーダーに関与してもらう構想のようだ。

 演説では6年前、米国の現職大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏が原爆資料館で記帳した文章に触れた。「核兵器のない世界を追求する勇気を持ちましょう」。表舞台でオバマ氏の姿を目にすることはほぼないが、プラハ宣言をはじめ、その道義的責任はまだまだあると考える。ぜひ参加してほしい。

 さてあさって22日、核兵器禁止条約の発効から1年を迎える。岸田首相は3月に迫った第1回締約国会議へのオブザーバー参加にいまだ否定的のようだ。

 国際社会は今、放射線と同じように、目に見えない、においもない新型コロナウイルスとの闘いに連携して知恵を絞り、試行錯誤している。核兵器廃絶に向けた問題もコロナ同様に一丸となって取り組むことはできるはずだ。日本がその旗振り役になるタイミングとしては今が一番いいのではないか。節目の日を前に、そんなことを考えている。

(2022年1月20日朝刊掲載)

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