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連載・特集

広島世界平和ミッション ウクライナ編 冷戦時代の遺跡 核ミサイルと潜水艦の基地跡

消えぬ人類の危機 実感

 核兵器をすべて手放したウクライナ国内には、使われなくなった基地など「冷戦時代の遺跡」が数多く残っている。広島世界平和ミッション(広島国際文化財団主催)の第四陣一行は、もはや軍事機密ではなくなったこれらの遺跡を訪ね、冷戦時代の一端を垣間見た。

 ウクライナ中部のペルボマイスク市では、ソ連時代の核ミサイル基地に足を運んだ。基地は一九五九年に創設。第四三戦略ロケット軍が使用していた。現在は博物館として利用している施設以外は、すべて破壊されている。二〇〇二年に開館した博物館の見学者は、これまでに九千六百人にのぼる。

 黒海に面したクリミア半島の港町バラクラバには、かつての潜水艦基地があった。静かな入り江沿いの岩山をくり抜き、潜水艦七隻を収容できた。核攻撃があった場合は、市民が逃げ込む核シェルターも兼ねていた。完成したのは米ソ冷戦が激化した一九六三年。が、冷戦終結後の九〇年代に入るとほとんど使用されなくなり、九四年に閉鎖された、という。

 いずれの遺跡もけた外れのスケールだ。しかし、核保有国には一段と高度化された核兵器基地や軍事施設が今もある。冷戦時代の遺跡に触れたメンバーたちの心には、人類の危機がいまだ去っていない世界の現実の厳しさが一層迫ってきた。(文・岡田浩一 写真・野地俊治)

(2005年1月17日朝刊掲載)

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