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連載・特集

広島世界平和ミッション 第五陣の横顔 <5> 佐々木崇介さん(22) 広島市安佐南区中筋

紛争予防 現場に学ぶ

 「現場に出かけなければ分からないことがある」。四年間学んだ平和学の教訓である。今年四月、広島修道大大学院へ進学して、紛争予防について研究を深める。インド、パキスタンは、その前にぜひ訪ねておきたかった。

 「紛争が長年にわたって続き、互いに核兵器も保有して対峙(たいじ)している。現代の紛争の問題点を多く抱えている」

 新聞などで知る限り、両国民の大半は核兵器保有を「祖国の防衛に役立つと肯定的に受け止めている」と感じる。しかし、核兵器保有やミサイル開発には多額の予算がかかる。「その分、社会のインフラ整備や教育・医療面などにしわ寄せがくる。暮らしを犠牲にしてまで持ちたいのかを尋ねたい」

 パキスタンにあるアフガン難民キャンプも訪問したいと願う。平和学に足を踏み入れるきっかけがアフガン紛争だったからだ。

 大学一年の二〇〇一年七月、平和学の必修授業で、アフガニスタンをテーマにリポートを書いた。タリバンや国際テロ組織アルカイダの危険性も予見する内容だった。二カ月後、米中枢同時テロが発生。間もなく米軍によるアフガン空爆が始まった。

 「奇妙な縁を感じた」と当時を振り返る。世界の情勢と自らの研究が直結する醍醐味(だいごみ)が、学問への興味を一層高めた。

 三原市生まれ。郷土の広島を愛しているという。だからこそ「広島で起きた歴史的な出来事を避けては通れないと思う」。小、中学校で平和教育を受ける傍ら、第二次世界大戦にまつわる本を数多く読んだ。

 戦時中、日本がアジアなどで犯した罪も知り、原爆投下理由についても学んだ。「日本が過ちを犯したからといって、原爆投下を認めることはできない」と、正当化を強く否定する。

 昨年八月には、広島市の市民グループが企画したカザフスタンのセミパラチンスク核実験場周辺への研修旅行に参加。ソ連時代の地下核実験でできた直径数百メートルのクレーターのふちに立ち「核軍備競争の不毛さと、核戦争が起きれば人類は生き残れないという恐怖を感じた」と言う。

 核兵器は開発の過程でも犠牲者が出る。「そのことも、現地の人たちと話し合いたい」。旅の経験は、大学院で論文にまとめるつもりだ。(おわり)

(2005年1月20日朝刊掲載)

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