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世界の指導者「被爆地訪問を」 日米 共同声明 NPT重視 核禁止条約は触れず

 日米両政府は21日、核軍縮交渉義務などを定めた核拡散防止条約(NPT)の重要性を確認する共同声明を出した。各国指導者や若者に戦争被爆地の広島、長崎を訪れるよう提唱。核軍拡を進める中国には透明性の向上を求めた。「核なき世界」の実現に向けた岸田文雄首相(広島1区)とバイデン大統領の共鳴がうかがえる内容だが、核兵器禁止条約には触れなかった。(下久保聖司、口元惇矢)

 NPTについて「核兵器の大幅な削減を可能とし、将来的な核軍縮の不可欠な基礎となる」と強調。全ての締約国に対し、ことし8月開催で調整されているNPT再検討会議で意義ある成果を出すよう求めた。

 原爆を投下した米国の現職大統領として初めてオバマ氏が2016年に広島を訪れたことに触れ「政治指導者と若者に対し、理解の向上、維持のために広島、長崎を訪問するよう要請する」と強調。米中ロ英仏の核兵器保有五大国首脳が今月、核戦争回避を訴えた共同声明をまとめたことに日本は歓迎の意を記した。

 日米は「中国による核能力増強に留意する」と指摘し「核リスクを低減し透明性を高め、核軍縮の進展に貢献するよう要請する」とした。北朝鮮を巡っては核兵器を含む全ての大量破壊兵器や弾道ミサイルの「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)」を要求。イランには核活動の拡大停止と、監視に当たる国際原子力機関(IAEA)への即時協力を求めた。

 22日に発効1年の節目を迎える核兵器禁止条約への言及はなかった。非合法化で核抑止力を縛られたくない米国と「核の傘」に依存する日本の思惑が透ける。

 日米は前回のNPT再検討会議が開かれた15年にも「広島と長崎は永遠に世界の記憶に刻み込まれる」などとしてNPTの重要性を訴える共同声明を出した。

(2022年1月22日朝刊掲載)

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