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問われる首相の行動 核兵器禁止条約発効1年 締約国会議 参加求める声

 核兵器の開発や保有などを全面的に禁止する核兵器禁止条約は22日、発効から1年の節目を迎えた。被爆地広島、長崎の訴えから生まれたうねりは国際社会にさらなる広がりを見せる。その中で被爆地から誕生した岸田文雄首相(広島1区)は「核兵器なき世界」の「出口」と意義を認めつつ参加を否定。被爆者が求める第1回締約国会議へのオブザーバー参加にも慎重だ。禁止条約と距離を置いたまま、核軍縮をリードする道筋は描けるのか。

 オーストリア・ウィーンで3月にある締約国会議に参加するのは全て核兵器を持たない国。核拡散防止条約(NPT)体制下で進まない核軍縮への危機感が禁止条約採択につながった。米中ロ英仏ら核兵器保有国は強く条約に反対する。

 首相は昨年10月の就任会見で「核兵器のない世界を目指す際の出口に当たる大変重要な条約」と評価した一方、参加に消極的な姿勢を示した。日本が単独で加われば核兵器保有国と非保有国との溝が深まる、との理由からだが、双方の「橋渡し」に尽くすとの主張は9年近く続いた安倍・菅政権と何ら変わっていない。

 今月予定されたNPT再検討会議の再延期で核軍縮のさらなる停滞が懸念される中、地元での年内開催を表明したのが「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」。現職米大統領で初めて広島を訪れたオバマ氏ら各国の政治指導者を招き、機運を高める狙いがある。

 唯一の戦争被爆国に対し締約国会議オブザーバー参加への期待は消えないが、米国の核の傘に安全保障を頼る以上、「米国との信頼関係を優先する」と消極姿勢を崩さない。21日のテレビ会議形式によるバイデン大統領との会談でも禁止条約への言及はなかった。

 こうした状況のまま国際賢人会議を開催しても「手放しで評価できない」との指摘もある。非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)会長(53)は「『橋渡し』をするというのなら非保有国との対話は不可欠なはず。締約国会議への参加は必須だ」と話す。

 締約国会議前日には「核兵器の非人道性に関する国際会議」も計画される。禁止条約制定の原動力となった会議で過去3回は日本も参加したが、林芳正外相(山口3区)は21日、「現時点で招待を受けていない」とするにとどめた。

 日本被団協の田中熙巳代表委員(89)は「米国の顔色をうかがうのではなく、被爆国の代表として『核兵器は絶対悪だ』ときっぱり物言う姿勢に転じてほしい」と首相に求める。(樋口浩二)

(2022年1月22日朝刊掲載)

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