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社説・コラム

天風録 『無為の時はここまでに』

 1月は往(い)ぬる。おとそ気分が抜け切らないうちに過ぎていく。ただ今年はいつも以上に、時計が早回りした気がする。市中を駆け巡るオミクロンにあおられ、右往左往するうち時間を無駄にしたよう▲ひと月どころか、丸々1年があっという間だった。ミャンマーで国軍がクーデターを起こしたのは昨年のきょう。今の時代、国民に向けて発砲するといった非道で野蛮な行為がいつまでも続くはずがない。そう国際社会は高をくくっていたのだが…▲若者のデモに猛スピードで車が突っ込み、市民をかくまったと少数民族の村が焼き打ちに遭う。この1年間で100人以上の子どもを含む1500人が容赦ない暴力の犠牲になったという。時間を巻き戻せないものか▲国民の半数近い2500万人が貧困ライン以下の暮らしにあえいでいる。国の将来を担う学生がジャングルに身を潜め、ペンを銃に持ち替えて国軍への抵抗闘争を続けている。「世界から見捨てられた」と嘆きながら▲節目のきょう、現地の市民は「沈黙のストライキ」を予定し、国軍は武力で蹴散らす構えとされる。これ以上の流血の事態を避けるには、国際社会が無為の時間をむさぼる猶予はなさそう。

(2022年2月1日朝刊掲載)

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