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連載・特集

『生きて』 ミカサ前社長 佐伯武俊さん(1939年~) <11> スローガン

スポーツの意義訴える

  ≪社長に就いた翌年の2004年、会社の新スローガン「スポーツエブリデイ」を打ち出した。スポーツを楽しみ、全ての人々の健やかな体と豊かな心を育む―。そんな思いを込めた≫

 スローガンのことを考え始めたのは1970年代かな。各社が工夫を凝らしていた時期だった。あるときから「トライ・ザ・フューチャー」を掲げていたが、どこか大手が「フューチャー」を付けたので、変えようと。社内の何人かで考えたんだけど、あまりぴんとくるものが思いつかなかった。

 ヒントになったのは米国向けのポスター。「エブリコート・エブリゲーム・エブリチーム」だったか「エブリ」が使われていたんだ。これなら国内外に伝わりやすいと思って。米国法人の社長だったマッコイさんにいくつか候補を挙げてもらったら、その中に「スポーツエブリデイ」があった。シンプル過ぎるかなと懸念もあったけど、社内でもいいんじゃないかとなって決まった。

 ≪会社の代表として、各国である国際バレーボール連盟の総会に出席した。食事会ではマイクを握り、スポーツエブリデイの意義を発信。「バレーとの関わりが、心身の健康や地域社会での親睦を深める。そしてより長く豊かな楽しい人生へと世界の人々を導く」と訴えた≫

 国内だけでなく米国や欧州、中国など各地に行った。最も印象に残っているのは2010年にイタリアのローマであった夕食会。会場は「ローマの休日」でオードリー・ヘプバーンが記者会見をした、あのコロンナ宮殿。子どもの頃から大好きな映画で、こんな偶然があるのかと思った。セルビアはまさにスポーツエブリデイの国だった。人口は多くないけど、バレーはトップクラスの強豪国だ。ちょっとでも時間があればスポーツをする風土があるみたい。

 日本でもボールに興味を持つ人を増やしたいと、試合球だけじゃなく、子どもからお年寄りまで親しんでもらえるボールづくりに力を入れた。軟らかさや大きさ、弾み方を工夫してね。「ボールは硬い」というイメージを変えたくて。気軽にボールに接することができる。それが大事にしてきた考え方です。

(2022年2月1日朝刊掲載)

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