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露艦乗組員救助 映画に イルティッシュ号 日本海海戦で江津に漂着

石見ケーブルが協力 友好の精神や「祭り」紹介

 日露戦争時に江津市沖合で沈没したロシア艦「イルティッシュ号」の乗組員を住民が助けた歴史を題材に、ロシアの映像制作会社が記録映画を完成させた。敵国にもかかわらず救助した友好の精神や、地元住民たちが史実を語り継ぐために続ける「ロシア祭り」などを紹介する。関係者は「両国関係を考えるきっかけとして歴史を知ってほしい」と願う。(下高充生)

 タイトルは「イルティッシュ号の来た日」で、約45分。イルティッシュ号は1905年の日本海海戦で日本艦隊の砲弾を受けて和木町沖に漂着し、200人以上の乗組員を地元住民が救助している。この乗組員の子孫と住民へのインタビューや、海戦時の記録映像を盛り込んだ。

 住民たちは救助の翌年から歴史を伝えたり、ロシアからの訪問団と交流したりするロシア祭りを開催している。映画では、祭りで歴史にちなんだ歌を子どもたちが披露する様子など、伝承する活動も取り上げた。

 2019年にロシアで乗組員と住民それぞれの子孫たちが集まる円卓会議を開き、ロシア歴史協会の協力を得て映画の制作も始まった。モスクワ・ジャパンクラブ(在ロシア日本商工会)の岡田邦生事務局長(62)が、17年に出版された絵本の報道で史実を知り、乗組員の子孫を探し始めた活動がきっかけという。

 江津での撮影は石見ケーブルビジョン(浜田市)が協力し、20年7月から1年余りで完成した。記録映画はこれまでに同ケーブルテレビや、ロシアのテレビ局で放送されたという。

 1月中旬には県立大浜田キャンパス(同)でロシア語を履修する学生たちを対象に上映会を開いた。来日した岡田事務局長は、太平洋戦争末期に旧ソ連が対日参戦した年に触れ、「歴史には1945年という日本人にとって悲しいページもあれば、05年のような誇り得るページもある。たくさんのページを知った上で、ロシアとどう付き合うかを考えてほしい」と述べた。

(2022年2月2日朝刊掲載)

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