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水面下で微妙な変化 上関埋め立て延長申請1年 政権交代が反対派に動揺

 山口県上関町への原発建設計画を進める中国電力が、建設予定地の公有水面埋め立て免許の延長を昨年10月に県に申請して5日で1年を迎えた。山本繁太郎知事は曲折を経てことし3月に延長の可否判断を1年程度先送りすると表明。福島第1原発事故の影響で工事そのものは中断されているが、民主党から自民党への政権交代もあり、べたなぎの水面下では微妙な変化も起きている。

 建設予定地の北東約4・5キロの同町長島蒲井地区。原発用地造成を請け負った共同企業体(JV)のプレハブ2階建て事務所棟1棟だけがぽつんと立つ。

 中電が2009年10月に埋め立てに着手して以降、多いときには計4棟のプレハブがあった。が、ことし2月に3棟が姿を消し、現場の海域は埋め立て工事を阻止しようと船で押し掛けた反対派住民と、中電側とがにらみあった騒々しさはすっかり消えている。

 「申請は許可できない」と明言していた山本知事はことし3月、延長の判断を1年程度先送りにする考えを県議会で表明した。前言撤回は反対派から激しく批判されたが、その後7カ月は県の延長申請の審査は実質ストップ。県は中電に対し、5回目の補足説明を求めてその回答を待っている状況で、県港湾課によると、中電側との協議はいまは特にしていないという。

 しかし、表面上はべたなぎの上関原発計画も水面下では微妙な変化が起きている。

 昨年12月に発足した安倍晋三政権は、民主党政権の原発稼働ゼロ目標の見直しを明言。6月にまとめた成長戦略で「原子力発電の活用」を掲げ、再稼働に「政府一丸となって最大限取り組む」と明記した。

 上関町は9月、福島原発事故後、維持管理に当て込む原発関連の交付金が見通せないとして先送りしていた総合文化センターと農水産物市場の入札を実施。規模を縮小し今月中旬にも着工する。中電は「特に丁寧に対応する必要がある」として専任社員を上関町近隣の3営業所に配置して事業PRを強める。

 一方、反対派住民が多数を占めてきた県漁協祝島支店は2月末、これまで拒否し続けてきた漁業補償金の受け取りに一転して賛成。配分案を決める全体集会が天候不良や島民らの抗議で中止されるなど動揺が続く。

 「上関原発を建てさせない祝島島民の会」(清水敏保代表)は上関原発反対の全県的な受け皿を作ろうと、市民団体や県議たちと連携。党派や信条を超えた集会の来年3月の開催を模索するなど、公有水面埋め立てを不許可にするように働き掛けを強めている。(井上龍太郎)

上関原発計画
 中電が上関町に計画する改良沸騰水型軽水炉。1、2号機の出力はいずれも137万3千キロワット。埋め立てる海域は約14万平方メートルあり、県は2008年10月に公有水面埋め立てを免許した。中電は09年10月に作業を始めたが、福島原発事故の影響などで中断。期限切れ直前の昨年10月5日、免許の3年延長を県に申請した。県は申請以降、指定期間内に工事を完了できなかった理由などを中電に繰り返し照会。ことし3月には山本繁太郎知事が免許の可否判断を1年程度先送りすることを表明している。

(2013年10月5日朝刊掲載)

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