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日米「不一致」続々露呈 在日米軍 オミクロン株対応 地位協定見直し求める声

 新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」感染急拡大の震源地とみられる岩国基地(岩国市)など在日米軍施設を巡り、日米両政府の感染防止策の「不一致」が相次いで明るみに出た。入国する米兵らへの検査が日本側と違う運用だったことが判明し、政府の実態把握も後手に回った。水際対策で歩調をそろえるとした合意は守られず、専門家からは米軍対応の根幹にある日米地位協定の見直しを求める声が強まる。(樋口浩二、口元惇矢)

 「日米間のコミュニケーションに不十分な点があったことは否定できない」。松野博一官房長官は3日の記者会見で、出入国時の検査を巡る日米の対応のずれを認めた。日本は出入国時とも検査を義務付けているのに対し、米軍は2021年9月3日、ワクチン接種を終えた米兵らが日本に入国する際の検査を免除する運用変更をしていた。

 日米両政府は20年7月、「整合的」な水際対策を講じるとする共同文書を発表。入国時検査の実施も明記していた。米軍に大きな権限を与える日米地位協定によって米兵らの検疫に日本の主権は及ばないが、コロナ対策の運用では日米が連携し、感染拡大を防ぐ態勢を敷いたはずだった。

 ところが米軍の運用変更により、態勢はもろくも崩れた。しかも日本側への検査免除の連絡時期で日米の主張は食い違いを見せる。

 複数の政府関係者は「昨年12月24日に初めて聞いた」とし、すぐに改善を申し入れたとする。

 この点に関し林芳正外相(山口3区)は4日の記者会見で、米軍から「(以前から)外務省に通知していた」との反論を3日に受けたと説明。これに対し政府として「そのような認識を持っていない旨を改めて明確にした」と強調したが、外務省の説明の信ぴょう性に疑問が生じた形だ。

 米軍のコロナ対応では岩国基地内で1月、一部の飲食店が酒を提供していたことも判明。周辺自治体の飲食店に対し、山口県が提供停止を要請している中でのことだった。政府は事実関係を米軍に照会したが、回答に6日間も要した。

 感染の有無を調べる抗原検査も、日本が採用する定量検査と比べ、検出に一定以上のウイルス量が必要で、精度が劣る定性検査で実施されていたことが1月28日に分かった。

 野党は「問題の本質は日米地位協定にある」として国会論戦で政府に改定を迫るが、岸田文雄首相(広島1区)らは重ねて否定。1月末に新設した日米合同委員会内の検疫・保健分科委員会で「議論を深めていく」と繰り返す。

 在日米軍問題に詳しい琉球大の北上田源准教授は「地位協定はコロナ対応の『米軍任せ』を許しており、政府は改定を求めるべきだ。日米合同委員会の議論も密室で進むため検証できず、透明化する必要がある」と指摘する。

日米地位協定
 1960年の日米安全保障条約改定に伴い締結された政府間協定。日本国内の施設・区域使用を巡り米軍に大きな権限を認める。日本の主権が事実上及ばないため、米軍絡みの事件や事故で日本側の捜査を阻む点が問題視されてきた。9条2項は米軍関係者が「外国人の登録および管理に関する日本国の法令の適用から除外される」としており、この「管理」に含まれる検疫は96年の日米合同委員会合意で、在日米軍基地内は米軍が責任を持つとされた。

(2022年2月5日朝刊掲載)

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