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「空白の十年」来月出版へ 広島県被団協が手記集

■記者 水川恭輔

 広島県被団協(坪井直理事長)は、被爆者の手記集「空白の十年」を7月末に出版する方針を決めた。原爆投下後、援護策や被爆者組織がほとんどなかった苦闘の時代の生活がつづられる。4日、広島市中区で開いた総会で明らかにした。

 被爆後10年間の健康被害などを題材に2007年7月から手記を募集し、122編が寄せられた。ケロイドの痛みに耐える日々、孤独との闘い、結婚や就職での苦悩、恩師からの励まし…。昨年夏の出版を目指したが、内容確認や文章の構成に時間がかかった。最終的に71編を収録する。

 手記集には、県被団協が「空白の十年」について被爆者約7000人から回答を得た06年のアンケートの結果や、被爆の惨状を刻んだ写真も掲載する。

 約2000部発行。原爆資料館(中区)や図書館などに寄贈する。ページ数などの詳細は詰めを急ぐ。坪井理事長は「明日の生活も不安だった当時の被爆者の苦闘を伝えたい」と話している。

 また、この日の総会には約80人が出席し、「被爆2世部会」を設ける規約案を承認した。来春にニューヨークである核拡散防止条約(NPT)再検討会議に、前回の6人を上回る代表団の派遣を目指す活動方針も決めた。

(2009年6月5日朝刊掲載)

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