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台湾「日本語世代」の苦悩 12日から広島・岡山で上映 周南出身

 日本統治下(1895~1945年)の台湾で日本語による教育を受けた「日本語世代」を追い続ける山口県周南市出身の映画監督酒井充子さん(43)。3作目のドキュメンタリー「台湾アイデンティティー」が、12日から広島市中区のサロンシネマと岡山市北区のシネマ・クレールで上映される。

 旧日本軍を前線、銃後で支えた日本語世代5人の複雑な思いに耳を傾けたデビュー作「台湾人生」(2009年)の続編。別の男女6人に寄り添い、第2次世界大戦後、時代に翻弄(ほんろう)され続けたそれぞれの歩みをたどる。

 敗戦により日本の統治が解けた台湾では、中華民国による弾圧があった。父親を銃殺され、自らも長年にわたり尋問を受けた女性。反乱罪で8年間、収容所に入れられた男性。日本兵として終戦を迎え、日本やインドネシアにとどまった人たちの苦悩も映し出す。

 「日本語を話し、日本人として生きた人たちが歩んだ道のりを思うとき、戦後、台湾を顧みてこなかった日本の姿が映し鏡のように見えてくる」と酒井監督。「日本人は台湾をあまりに知らない」

 台湾には昨年、約144万人が日本から訪れた。が、「両国の過去に思いを寄せる人は少ない」と強調する。新聞記者だった自らも、98年に映画のロケ地巡りで初めて台湾を訪問。現地の老人に流ちょうな日本語で話し掛けられて、日本語世代の存在を知った。「まずは知ってほしい」。自戒と怒りを込めてスクリーン越しに訴える。(松本大典)

(2013年10月8日朝刊掲載)

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