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社説・コラム

天風録 『今こそ「エケケイリア」を』

 このところ紙面をにぎわすのは連日奮闘する五輪選手たちだが、読者をハラハラさせるニュースの主役がもう1人いる。ロシアのプーチン大統領だ。ウクライナ情勢が日ごとに緊迫し、この人の動静から目を離せない▲ロシア部隊の大規模軍事行動はいつ始まってもおかしくない―。先週末、米大統領補佐官の発言が駆け巡り、日本や欧米はウクライナから自国民を急ぎ退避させようと大慌て。「平和の祭典」の真っ最中だというのに▲北京冬季五輪とパラリンピック期間中は、前後1週間も含めて戦争をしない。慣例にならって国際社会は昨年末、国連本会議で休戦を決議した。中国やロシアなど173カ国が共同提案したという▲そのロシアが8年前、武力を背景にウクライナ領のクリミア半島を併合したのは、ソチ冬季パラリンピックの閉幕2日後のことだ。当時も大統領だったプーチン氏の辞書には「五輪休戦」の言葉があるのか、ないのか▲都市間戦争に明け暮れた紀元前のギリシャは4年ごとに停戦しては競技会を開いた。その古代オリンピック休戦は「エケケイリア」と呼ばれ「手をつなぐ」の意味もあったそうだ。今こそ世界共通の合言葉にできないものか。

(2022年2月15日朝刊掲載)

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