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核の非人道性 声明賛同へ 政府 方針転換 被爆地の声考慮

 政府は10日、米ニューヨークで開会中の国連総会第1委員会(軍縮)でニュージーランドなどがまとめる核兵器の非人道性に関する共同声明に賛同して署名する方針を固めた。同様の声明はこれまで3度まとめられたが、日本は「わが国の安全保障政策と合致しない」と賛同を見送り、被爆地広島・長崎から批判が上がっていた。声明に拘束力がないと確認する方向でニュージーランド側と調整のめどが立ち、従来の立場を転換した。(藤村潤平、田中美千子)

 声明はスイスや南アフリカなど16カ国が中心となり、他の国々に賛同署名を働き掛けている。被爆地広島出身の岸田文雄外相は賛同に強い意欲を示していた。

 今回の声明の草案は4月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議第2回準備委員会でまとまった前回同様、「いかなる状況下でも核兵器を使用すべきでない」との趣旨の記述が盛り込まれる見通しだ。政府は、こうした内容が米国の核政策に頼る日本の立場を縛る可能性があると懸念していた。今回は日本側が事前に働き掛け、声明に拘束力がないと確認することで折り合う見通しとなった。

 来年4月には、日本が主導する、非核保有12カ国による「軍縮・不拡散イニシアチブ」(NPDI)外相会合が広島市で開かれる。2015年のNPT再検討会議に向けた核軍縮の提案をまとめる予定だ。政府は多くの国から提案に同調してもらうためにも、声明に賛同することが重要と判断した。

 政府は、過去3度の賛同見送りで、被爆地や平和団体から非難が集中していたことも考慮したとみられる。

 共同声明は、17日(現地時間)にも第1委員会で公表される見通しで、核兵器が広範囲で非人道的被害を引き起こすとして、使うべきではないと世界にアピールする内容。16カ国は、前回の声明の80カ国を上回る署名を集めたい意向だ。

核兵器の非人道性に関する共同声明
 2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が核兵器使用による壊滅的被害に懸念を表明したのを受け、核兵器の非人道性に着目した議論が活発化している。ニュージーランドなど16カ国は12年のNPT再検討会議第1回準備委員会の際に核兵器の非人道的側面を強調する共同声明を発表。その後も2度、同趣旨の声明を出した。核軍縮に熱心なノルウェーは今年3月、首都オスロで核兵器の非人道的影響を議題にした国際会議を開いた。

(2013年10月11日朝刊掲載)

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