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被爆の記憶を刻む 蓮光寺の山門改修

被爆の記憶を刻む 蓮光寺の山門改修

 県指定の天然記念物「長束の蓮華松(れんげまつ)」で知られる広島市南区長束の蓮光寺。静かにたたずむ山門は、1月初旬に改修工事を終えたばかり。原爆に耐えた被爆建物だ。

 寺の歴史は古い。もともと天台宗の寺だったが、1496年に浄土真宗に改宗し、現在住職の松陰宏之さん(76)は21代目。山門は高さ約5メートル、横約5・7メートルの木造で、1902年に建てられたという。今回の改修では、いったん全て解体した後にシロアリなどによって傷んだ部分を取り除いた。

 山門の扉には、約30センチのひび割れが残る。「原爆投下の爆風によるものかもしれないが、記録はない」と松陰さん。被爆し傷ついた人々は北を目指して避難し、本堂で数日過ごした人もいたという。「瀕死(ひんし)の状態でこの山門をくぐり、ここで亡くなった人もいただろう。文字や写真では伝えられないものを、この門から想像することが大切だと思うのです」(小林旦地)

(2022年2月19日朝刊掲載)

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