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社説・コラム

天風録 『おみくじ付き応援バーガー』

 「おみくじ付き」と、のぼり旗が掲げられている。原爆ドームから程近い広島市中区の本覚寺が境内に据えたハンバーガーの自動販売機。本紙の地方版でも先日、話題に取り上げていた▲おまけが付くとそわそわする身としては、おみくじがうれしい。それに収益は寺で切り盛りする「子ども食堂」に充てられるという。ハンバーガー1個で何度もいい気分が味わえる。評判なのか、きのうはカレーチーズ味のボタンが売り切れだった▲もともと、自販機とおみくじの相性はいい。周南市鹿野の宮司、宮本重胤(しげたね)が明治時代に編み出した印刷のおみくじは、同じく考案した自販機と相まって全国に広まった。相性ついでにいえば、社会運動にも向いていそうだ▲重胤は一貫し、女性の神職任用や参政権を唱えた人である。おみくじ販売も、自前の機関紙「女子道」の台所をやりくりする算段の一つだった。その創刊は、女性解放運動家平塚らいてうの雑誌「青鞜(せいとう)」より数年早い▲コロナ禍のさなか、子ども食堂には食の安全網にとどまらず、全世代を見守るよりどころとして期待も高まりつつある。350円で買った、例の応援バーガーのおみくじは「吉」と出た。幸先がいい。

(2022年2月20日朝刊掲載)

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