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世界の被爆者に目を向けて 「市民の会」豊永さん オンライン講演 援護策受けられぬ現状も

 在外被爆者たちの現状や課題を考える講演会が19日、オンラインであった。「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」世話人の豊永恵三郎さん(85)=広島市安芸区=が「今も苦しむ世界の被爆者に目を向けてほしい」と訴えた。(松本輝)

 豊永さんは、日本で被爆した多くの韓国・朝鮮人が、1910年の韓国併合後に生活のため日本に来ていたとの調査結果を提示。「日本には被爆国としての歴史だけでなく、加害の歴史もある。戦後76年が経過し、これからの平和教育はそこから目を背けてはならない」と強調した。

 原爆投下当時9歳で、建物疎開作業に駆り出されていて被爆した母と弟を捜して入市被爆した豊永さん。71年の韓国訪問を機に「市民の会」広島支部の初代支部長に就き、在外被爆者の被爆者健康手帳の取得や裁判支援に長年、尽力してきた。

 豊永さんは在外被爆者を巡る援護制度にも触れ、終戦後に北朝鮮へ渡った被爆者は、日本との国交がないため人数が分からず、援護策も受けられていないと指摘。「若い人の在外被爆者への関心は低いように感じる。世界の被爆者の被爆体験の継承が大きな課題だ」と結んだ。

 講演会は、広島大比較日本文化学プロジェクト研究センターが主催。学内外の約100人が聴講した。

(2022年2月20日朝刊掲載)

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