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核兵器不使用声明に賛同 問われる被爆国の指導力

 核兵器の非人道性と不使用を訴える共同声明に日本政府が賛同するのは、核軍縮分野で唯一の被爆国としてリーダーシップを発揮したい日本側と、声明の影響力を高めたいニュージーランドなど有志国双方の思惑が一致した結果といえる。ただ米国の「核の傘」に依存する日本の姿勢に変わりはなく、声明が国際的な核兵器廃絶の機運を高められるかどうかは未知数だ。(藤村潤平)

 声明への賛同は被爆地出身の岸田文雄外相(広島1区)にとって大きな課題だった。政府は来年春に広島市である非核保有12カ国でつくる「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」外相会合や、被爆70年に当たる2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議など、相次いで予定される核軍縮関連の国際会議で存在感を示したいからだ。

 今春の3度目の声明への賛同断念は、被爆地を中心に批判の声が噴出した。以降、岸田氏は外遊時に北朝鮮の核・ミサイル問題など安全保障上の脅威を抱える日本の立場を訴え、賛同への地ならしを進めてきた。

 有志国も賛同国の掘り起こしに努めてきた。「日本の賛同は大きなインパクト」(外務省関係者)と言うように、被爆国の支持は賛同の輪を広げる可能性がある。

 だが日本が賛同する際の絶対条件は、米の核政策に影響がないことを担保することだ。今回、声明が日本の立場を縛らないと確認したとされる。核兵器廃絶を掲げながら、米国の「核の傘」に頼る矛盾が浮かび上がる。

 そもそも有志国は核兵器の非合法化を訴えてきた。一方で日本は核軍縮の現実的なステップを志向する。今回の声明を前向きに捉えれば核兵器廃絶に向け異なるアプローチを取る勢力が連携したことだ。日本政府は、この連携を生かす責任を負った。

(2013年10月12日朝刊掲載)

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