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女性劇団70年ぶり「再演」へ 東京の美術作家ら 来月に舞台撮影 戦後復興期 尾道市吉和で10年活動

 戦後復興期の尾道市吉和地区に女性たちでつくり流行歌やオリジナルの演目を披露した「星劇団」があった。東京の美術作家横谷奈歩さん(46)たちが劇団の歩みなどを調査し、現代に劇団をよみがえらせようとしている。3月下旬に「再演」として舞台を撮影。メンバーは最後の追い込みに汗を流している。

 2013年、制作活動で尾道に滞在していた横谷さんが元劇団員の故川原ヤエ子さん(18年に93歳で死去)に出会ったのがきっかけ。星劇団は1946年に結成し、同市東元町にあった「衆楽座」を拠点に約10年活動した。男性も裏方で支え、娯楽の少ない時代に幅広い世代に親しまれた。しかし解散後の60年に衆楽座は焼失し、存在を知る人は少なくなっていた。

 横谷さんたちが、民生委員や住民から聞き取りを続け「星劇団再演プロジェクト」と名付けて、再公演に向け動き始めた。20年には劇団関係者の家族が保管していた写真を基に、当時と同じ場所で衣装やポーズを再現した写真を撮った。

 22日夜には、同市東土堂町の光明寺会館でメンバーたち11人がオンラインを交え約2時間けいこをした。せりふや立ち位置、照明の当て方などを確認した。舞台は2部構成で、当時の演目に劇団の成り立ちやダンス、歌などを加える。

 当初20年秋に予定していた公演は新型コロナ禍で2度延期。3月の舞台も客は招かず、ビデオに収録することにした。年内に同地区で上映会を開く。横谷さんは「自由が制限された今の状況は戦後と重なる。数え切れない人々の助けで奇跡的にここまで来た」。約70年ぶりの幕開けは間もなくだ。(石下奈海)

(2022年2月24日朝刊掲載)

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