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広島駅一帯の変遷 写真に 店内で披露 70年前の風景も 南区の理容師秋信さんと亡き父撮影

 広島市南区松原町の理容師秋信隆さん(73)が、再開発によって急速に姿を変えるJR広島駅一帯の写真を撮り続けている。猿猴橋近くで120年続く理容店を営み、店内には1950年代から近年までの写真を収めたアルバム約20冊が並ぶ。「駅前の移り変わりを伝えたい」。地域への愛着があふれる。(山田太一)

 秋信さんは、1901年創業の理容店の4代目で、現在の店名は「メンズサロン・アキノブ」。父親邦之さん(2014年に92歳で死去)の趣味の影響で、10代から鉄道写真を撮り始め、自宅に現像のために暗室を造った。高校卒業後は理容師の道へ。休日にはカメラを携えて歩いた。約15年前にデジタルカメラを購入後は、駅前を撮る機会が増えたという。

 アルバムには自身と邦之さんの写真、市中心部の絵はがきなどの資料を収める。原爆で理容店は焼け落ちたが、復員した邦之さんと家族が近くにバラックを建てて店を再開。邦之さんが1953年ごろに駅前を撮影した9枚は旧駅舎や52年開業の広島百貨店、猿猴川沿いにひしめく木造建物が写っている。

 秋信さんも2006年ごろ、比較できるように近いアングルで撮影。そのほか、新幹線開通前の駅北口や解体が迫る愛友市場の様子も写してきた。駅南口の再開発事業に伴い店は15年、10階建てビルの1階に移転した。懐かしむ常連客の声もあり、撮りためた写真や資料を整理し見てもらえるようにしたという。

 駅前はいま、高層ビルが立ち、新たな駅ビルや路面電車の駅前大橋ルートを造るつち音が響く。「当たり前だった光景が変わるのを実感した。写真で街並みを残し、皆さんが思い出をたどるのにも役立てば」と秋信さん。愛着変わらぬこの場所で、シャッターを切り続ける。

(2022年2月24日朝刊掲載)

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