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母国ウクライナ案じる 広島在住者 家族思い「戦争止めて」

 ロシアによる派兵決定などウクライナ情勢の緊迫度が日に日に高まる中、広島市内に住むウクライナ出身者が心を痛めている。母国の行く末や家族の身を案じて、「戦争を何とか食い止めてほしい」「現地の実情に関心を持って」と口々に訴える。

 「すごく心配。毎日母国の家族と電話している」。ウェブデザイナーのホーチナ・アナスタシアさん(38)=安佐南区=は、悲痛な思いを打ち明けた。ウクライナ中部の郷里には、両親やきょうだいが暮らす。「みんな元気そうに話してくれる。でも本当は怖くてたまらないはず」と推し量る。

 家族の話からは、現地の緊迫感がにじむ。非常食などを詰め込んだかばんや消火器を用意し、街への攻撃に備えている。市民向けには、射撃訓練や心臓マッサージなどの救急訓練が継続的にあるという。  「武力行使は起きてほしくない。ウクライナに必要なのは世界の支援だ」とホーチナさん。「日本人も現地の情勢に関心を持ち続けてほしい」と願う。

 首都キエフ出身の自営業女性(40)=中区=は「ニュースを見るたび、心配で涙が出る。何もできないことが悲しい」と声を震わせた。待避する人もいる中、古里の母や兄たちは「わが家を守りたい」と現地で生活を続けているという。

 母はロシア出身で、日常会話にはウクライナ語とロシア語が入り交じる。「どちらの国の出身でも、市民は互いを尊重しながら暮らしてきた。戦争は絶対にしないでほしい」と力を込めた。国際社会には「今回の侵攻を許してしまえば、世界のあらゆるところで同じことが起きかねない。当事者意識を持ってほしい」と望んだ。(高本友子)

(2022年2月24日朝刊掲載)

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