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連載・特集

緑地帯 川野祐二 エリザベト音大と歩んで⑤

 連載初回に、小規模校のエリザベトが、今なお存続しているのを疑問に感じている人がいると書いた。歴代理事長はイエズス会神父であったが私は聖職者ではない。彼らを模範に自らを律している。

 ゴーセンス理事長・学長は大学を興し、理想を追求したが、経営状況は厳しく、給与の遅配もあった。それを立て直したのは第2代の鎌田武夫理事長だった。前職は神学部教授であるが、株取引にも精通し、老朽化した校舎を次々と建て替え、大学院設置の基盤整備を行った。バブル経済末期に就任したのが小崎次郎理事長(帰化前は米国籍)。広島学院理科教員歴が物語るとおり研究熱心で、米国大学の経営を手本に、人口減少を見越した財務戦略を立てた。簡潔に言えば、年間の支出を減らし、基本金(積立金)を毎年着実に増やし、資産運用管理規程にのっとり運用して果実(利息)を得て大学運営にも活用しつつ、さらに基本金を増やす、の繰り返しだ。

 証券会社作成の学校法人財務比較資料では、大半の大学は運用可能な多額の資産はあるが、資産運用を行っていない。米国の大学とは大違いだ。昨年政府は、10兆円規模の大学ファンドを創設して、運用収益により研究者支援を行うと発表したが、本学では30年前から外債の長期保有を着実に実行し、収益を上げている。

 初代から3代の理事長は、みな神業により大学の発展に貢献した。後継理事者たちも、先輩の経営方針を守ると同時に時代の流れに適応させて、大学の存続と学生の学びを保証しようと奮闘している。(エリザベト音楽大理事長・学長=広島県府中町)

(2022年2月25日朝刊掲載)

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